労災保険

author:弁護士法人AURA(アウラ)

労働保険の概要

労災保険の保険者

労災保険は全国を単位として,「国」が保険者となっいます
現業業務は,都道府県労働局,労働基準監督署が行っています

適用労働者

原則として,常用・日雇・パートタイマー・アルバイト等名称及び雇用形態にかかわらず,労働の対価として賃金を受けるすべての労働者

※代表権・業務執行権がある役員は,原則労災保険の対象外

適用事業所

労働者を(1人でも)使用する事業所(国の直営事業,官公署の事業は適用外)
中小事業主,個人タクシー,大工などの一人親方なども労働保険への特別加入が認められる

保険料

  • 労災保険料は,事業主が全額負担する。(被保険者は負担しない)
  • 保険料は,事業の種類によって54種類に区分されている。(下記は一部抜粋)(令和4年)
事業の種類保険料率
金属工業,非金属工業又は石炭鉱業88/1000
水力発電施設,ずい道等新設事業62/1000
交通運輸事業4/1000
金融業,保険業又は不動産業2.5/1000

メリット制

個々の事業における労働災害の多寡により,労働保険率を増減させる制度

滞納している場合

保険料の滞納中に労働者が負傷し保険給付受けた場合は,保険給付額の40%相当額を限度として,事業主より費用が徴収される。

労災保険の対象

労災保険は,「業務災害」及び「通勤災害」を保護の対象としている

業務災害

業務災害は,業務が原因となり被災された労働者負傷,疾病,傷害又は死亡をいう。

事業主が安全配慮義務を十分に履行していなかった場合は,労災保険給付のの価額の限度を超える損害について,民事損害賠償を請求できる

業務上の損傷とは

事業主の支配・管理下で業務に従事している場合のほか,出張や社用での外出などにより事業所外で業務に従事している場合も対象です。

業務上の疾病とは

疾病,心理的負荷による精神障害についても,業務との間に相当因果関係が認められる場合は対象となる。

複数業務要因災害

複数事業労働者としては,傷病等が発生した時点において,事業主が同一でない複数の事業場に同時に使用されている労働者

複数の事業場の業務上の負荷を総合的に評価して,労災と認定できるのか判断する

通勤災害

就業に関し,「住居と就業の場所の往復」,「就業場所から他の就業場所への移動」などを合理的な経路及び方法で行う場合が対象で,業務の性質を有するものを除くとされている。

中断,逸脱について

通勤の途中で,中断や逸脱があった場合は,その後は原則として通勤とはならないが,日常生活上のやむを得ない理由で行う場合は,合理的な経路に復した後は再び通勤となる。

労災保険給付の種類

業務災害による給付のことを「〇〇補償給付」,通勤災害により給付を「〇〇給付」といいます
給付基礎日額=「業務上の災害等が発生した直前の3か月間の賃金」÷「その期間の暦日数」

療養(補償)給付

支給要件保険給付
業務災害又は通勤災害による傷病について,労災病院又は労災指定医療機関等で療養するとき療養の給付(現物給付)
(療養補償給付は自己負担なし)
業務災害又は通勤災害による傷病について,労災病院又は労災指定医療機関以外の医療機関で療養するとき療養費の支給

休業(補償)給付

支給要件保険給付
業務災害又は通勤災害による傷病による療養のため労働することができず賃金を受けられないとき休業4日目から休業1日につき給付基礎日額(※)の60%を支給
特別支給金
給付基礎日の20%

障がい(補償)給付

障害(補償)給付には,障害(補償)年金障害(補償)一時金の2つがあります。

支給要件保険給付
障害(補償)年金業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障害等級1~7級までに該当する障害が残ったとき給付基礎日額の313日分(1級)~131日(7級)に相当する額の年金を支給
障害(補償)一時金障害等級8~14級までに該当する障害が残ったとき給付基礎日額の503日分(8級)~56日分(14級)に相当する額の一時金を支給
特別支給金
第1級342万円~第14級8万円

傷病(補償)年金

支給要件保険給付
業務災害又は通勤災害による傷病が,1年6ヶ月を経過した日以降において治っておらず,傷病による障害の程度が傷病等級に該当するとき傷病の程度に応じ給付基礎日額の313日分(1級)~245日分(3級)に相当する額の年金を支給する
特別支給金
第1級は114万円~第3級は100万円

遺族(補償)給付

遺族(補償)給付には,遺族(補償)年金遺族(補償)一時金の2つがあります。

支給要件保険給付
遺族(補償)年金業務災害又は通勤災害により死亡したとき遺族の数に応じ給付基礎日額の153日分(遺族1人)~245日分(遺族4人以上)に相当する年金を支給
遺族(補償)一時金遺族(補償)年金を受け取る遺族がいないときなど給付基礎日額の1000日分を一時的に支給
特別支給金
遺族の人数にかかわらず300万円

介護(補償)給付

支給要件

障害・傷病(補償)年金の1級又は2級(神経・精神の障害及び胸腹部臓器の障害)受給者で,介護を受けているとき(障害者支援施設,介護保険施設等に入所していないことが条件)

最高限度額最低保障額
常時介護171,650円75,290円
随時介護85,780円37,600円
介護の必要度に応じて介護費用を支給

葬祭料・葬祭給付

支給要件保険給付
業務災害又は通勤災害により死亡した方の葬祭を行うとき315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額

二次健康診断等給付

支給要件保険給付
一次健康診断などの結果,脳・心疾患に関する一定の項目に異常の所見があるとき二次健康診断,特定保健指導など
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