立ち退き料の相場とは?

author:弁護士法人AURA(アウラ)

立ち退き料について困っていること、悩んでいることはありませんか?

立ち退き・再開発・マンション

目次

立ち退き料とは

内縁でも遺産相続ができるケース

貸主側の事情で賃借人に対して、退去を求める場合に、賃借人の損害を補填する意味で貸主から借主に支払う金銭をいいます。立ち退きを求める事情としては、「老朽化した賃貸建物を建て替えるため」、「再開発のため」あるいは「賃借している物件を賃貸人自身が利用したいため」などといったものがあります。

立ち退き料に含まれるもの

  • 移転費用
  • 移転することにより家賃が値上がりする場合はその差額分の補填

店舗などの立ち退きでは、このような状況も加味されます。

  • 移転先での内装費用
  • 移転により顧客を失うことによる損害の補填

立ち退き料が必要になる状況

内縁関係と認められないカップル

なぜ立ち退き料が必要になるかというと、そもそも「立ち退き料」は法律や判例でも認められている制度であり、その状況と理由を解説します。まずは事情により立ち退き料が必要になる状況と理由は次の通りです。

事情により立ち退き料が必要になる状況

  • 大家の都合で退去を求めるとき
  • 再開発による立ち退き
  • マンションや店舗の建て替え

大家の都合で退去を求めるとき

賃貸人自身が建物を利用するために、賃借人に立ち退きを求める状況では、賃借人がほとんど賃貸建物を利用していないなどの事情がない限り、立ち退き料の支払が必要になることが一般的です。

相談・解説 高齢者

マンションや店舗の建て替えの場合

賃貸などの建物を建て替えるために、賃借人に立ち退きを求める状況のとき、判例上では建物の老朽化、耐震性の不足などの事情があったとしても、極端に老朽化して重大な危険がある場合を除き、立ち退き料の支払が必要になることが一般的です。

再開発による立ち退き

再開発にともない、賃貸建物を解体するために、賃借人に立ち退きを求める状況では、この場合も、立ち退き料の支払が必要になることがが一般的です。

なぜ立ち退き料が必要になるか

立退きを求めるためには「正当な理由」が必要とはなにか?

住居や店舗、事務所など建物の賃貸借契約には、借地借家法という法律が適用されます※平成4年7月までに契約された賃貸借契約については借家法が適用されます。

借地借家法の条文はこちら

借地借家法でも借家法であっても、建物の賃貸借契約について賃貸人の側から賃貸借契約の解約を申し入れる際は、正当な理由が必要であるとされています。この「正当な理由」のルールは、賃貸借契約の期間が満了した際、賃貸人の側から次回の更新を拒否する場面にも適用されます。契約期間が満了した場合でも「正当な理由」がなければ賃貸人の側から更新を拒否することはできないのです。

「正当な理由」には立退料の支払が必要

前述の「正当な理由」は、「老朽化した賃貸建物を建て替えるため」、「再開発のため」あるいは「賃借している物件を賃貸人自身が利用したいため」などということだけでは、通常は認められません。建物の老朽化などの事情に加えて、立ち退きを余儀なくされる賃借人に対して一定の金銭的補償をしなければ、「正当な理由」を認めないとする判例が大多数を占めています。

立ち退き料が不要なケース

次の状況の場合では立ち退き料は不要となります。

賃借人側に家賃の滞納などの契約違反があり、賃貸借契約を解除できる場合

賃借人側に家賃の滞納や無断転貸などの契約違反がある場合は、賃貸人は賃貸借契約を解除することにより、賃借人に貸室の明け渡しを求めることができます。

この場合、立退料は必要ありません。家賃滞納の場合の強制退去については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

定期建物賃貸借契約の場合

定期建物賃貸借契約では、賃貸借契約の更新をしないことが法律上認められています。そのため、賃貸人は、契約期間が満了すれば、「正当な理由」があるかどうかにかかわらず、賃借人に明渡しを求めることが可能であり、立退料は必要ありません。

建物が極端に老朽化して重大な危険がある場合

建物が極端に老朽化して重大な危険がある場合は、立退料を支払わなくても、立退きを求める「正当な理由」があるとされるケースがあります(平成28年9月6日東京地方裁判所判決等)。ただし、これはごく例外的な場面に限られます。

居住用(マンションやアパート、戸建て)の賃貸における立ち退き料の相場はどのくらい?

家族、家

賃料5万円~10万円程度の老朽化した賃貸住宅の立退料については200万円程度と判断した裁判例が多くなっています。裁判前の立退き交渉の場面でも、賃貸人側から、移転先の住居の6ヶ月分の賃料+引っ越し代を立退料として提案するなど、100万円~200万円程度が相場になることが多くなっています。

参考コラム:立ち退き料(立退料)100万円は高い?安い?その相場は?

立ち退きに関する事例はこちらをご覧ください

弁護士法人AURA:立ち退き料の増額に関するご相談やお問い合わせ

店舗、テナントの立ち退き料の決め方について

ここからは営業用店舗の立退料については、居住用賃貸の立退料よりも近年高額化する傾向にあります。

営業用店舗の立ち退き料のポイント

  • 店舗の移転により店舗側は常連客を失う恐れがあり、それに対する補償(営業補償)が必要になること
  • 新店舗の内装の費用や、新店舗を常連客に案内する広告費などが必要になること

このような考え方から、賃料10万円前後の小規模の飲食店や理髪店の立退きの場面では、建物が老朽化しているなどの事情があっても、1000万円から1500万円程度の立退料の支払と引き換えに立退きを命じる判決が多くなっています。

また、より賃料が高い物件については、さらに立退料が高額になる傾向があります。立ち退き交渉は裁判によらずに進めることが原則ですので、必ずしも裁判例の相場にこだわる必要はありませんが、交渉にあたっては、判例でのオーソドックスな立退料の決め方や、判例上の立退料の相場をおさえておくことは重要です。店舗の立退料の決め方や相場についてはコラムで詳しく解説していますのでご参照ください。

事務所、オフィスの立ち退き料の目安はいくらか?

立ち退きを求める貸室の賃料の2年分がおよその目安

判例は様々ありますが、事務所やオフィスとして利用されている貸室の立退きについては、再開発などの事情で、老朽化に至る前に立ち退きを求めるケースが多くなっています。事務所やオフィスとしての利用の場合、営業用店舗の立退きとは異なり、移転により常連客を失うことに対する営業補償は問題にならないケースが多いです。そのため、移転費用や借家権価格を算定して立退料が決められているケースが多くなっています。そのため、移転費用や借家権価格を算定して立退料が決められているケースが多くなっています。

貸室利用の必要性が低い場合の立退料は比較的少額

事務所が通常のオフィス利用ではなく、データセンターや書類の保管のみに利用されるなど、あまり場所を選ばない目的で使用されている場合は、代替の貸室を検討する選択肢も多くなります。この場合は、賃借人側にあえて立退きを求められている貸室の利用を続ける必要性が低いことから、より低額な立退料で立退きを認める例があります。

借地権上の持ち家や所有店舗の立ち退き料について

借地からの立ち退きについては、地主の土地利用の必要性の程度や、借地人の借地の利用状況、借地契約の経過年数によって、立ち退き料の額が大きく変わってきます。「借地上建物を借地人が利用中の場合」と「借地上の建物の利用があまりされていない場合」にわけて、判例をもとにご説明したいと思います。

借地上建物を借地人が利用中の場合

借地上に借地人が建物を建てて利用中の場合、建物を建てた借地人に投下資本回収の機会を与えることを考慮する必要があり、立退料が高額になる傾向にあります。

不動産鑑定士が借地権価格を鑑定評価したうえで、その借地権価格をもとに立退料を算定することが多くなっています。

借地上建物の利用があまりされていない場合

一方、借地上建物の利用があまりされていない場合は、立退料も低額化する傾向にあります。

支払時期について

内縁でも遺産相続ができるケース

立退料の支払時期は、賃借人が立ち退いた後に支払うとすることが一般的です

立退料の交渉にあたっては、賃貸人側はできるだけ安く済ませたい、賃借人側はできるだけ多くもらいたいということにあり、交渉が困難な場合が多々あります。このような場面で賃貸人の立場からの立退料の交渉を行う場合は、立ち退きにあたっての交渉項目が「立退料」だけではないことに着目することがポイントです。例えば、敷金の返還や立ち退きの時期、あるいは立退料の支払時期も交渉材料とすることで、賃貸人側として無理なく譲歩できるポイントを見つけ、それを交渉材料に賃借人側の譲歩を引き出していくことが必要です。賃貸人側で移転先候補を探し、賃借人に積極的に提案していくことも交渉をすすめるうえで有効になることがあります。

なお、上記のような交渉をしても賃借人が不当に高い立退料を要求して交渉が進まないときは、立ち退きを求める裁判を起こし、裁判所で立退料を決めてもらうという選択肢も含めて考えることが必要です。

立ち退き料を支払ってくれない場合に賃借人がとれる対応

賃借人側の立場からは、立退料を支払ってもらえない場合は、立ち退きを拒むという選択肢があります。立退料の支払がない場合、通常は、賃貸人側からの賃貸借契約の解約に必要な「正当事由」が認められないため、賃借人は立ち退きを拒むことが可能です。賃貸人側はこの点を踏まえて立ち退き交渉を行う必要があります。

税金について

立退料の税務処理について

賃貸人側の税務処理

賃貸人側では、立退料は不動産所得の計算上、必要経費とすることができます。

国税庁:「立退料を支払ったとき」

賃借人側の税務処理

賃借人側で立退料を受け取ったときは、それは収入として計上したうえで、移転費用等を経費として計上することになります。

国税庁:「借家人が立退料をもらったとき」

消費税は非課税

立退料には消費税は課税されません。

まとめ

賃貸人側で立ち退き交渉をする場合、建物の耐震性が低いことや、耐震工事よりも建て替えが合理的であることなどについて、資料を示して交渉すること、賃借人に代替の移転先を提案することなど、さまざまな交渉のポイントがあります。

遅くとも立退きの2年前には交渉をスタートすることにより、期限ぎりぎりの交渉にならないようにすることも重要なポイントです。

立退料については、その金額の相場感に大きな幅があり、交渉の方法によって、結果も大きく変わってきます。

弁護士法人AURAは、不動産トラブルに強い弁護士がご相談を承りますので、お困りの際はご相談ください。


その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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