専門家が解説:成年後見制度の申立てと費用の全て

author:弁護士法人AURA(アウラ)
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成年後見制度は、法律的な保護が必要な人を支えるための重要な制度です。しかし、その申立て方法や費用については、しばしば複雑と感じられがちです。このコラムでは、成年後見制度の申立てプロセスとそれに伴う費用について、専門家の視点から分かりやすく解説します。

成年後見制度の法的枠組み

成年後見制度の法的枠組みは、専門家にとって重要な理解領域です。ここでは、制度の法的定義、目的、及び構成要素について詳細に解説し、法律専門家がクライアントの保護と代理において果たす役割を強調します。制度の基本原則と運用方法についての洞察を提供し、専門家としての知識と対応を深める内容になっています。

法的定義と目的

成年後見制度は、判断能力の不十分な成人を保護するための法的な仕組みです。この制度は、民法および成年後見等に関する法律に基づいて設定されており、個人の権利と利益を保護することを目的としています。

制度の構成要素

後見人

対象者の法的な代理人として行動し、財産管理や日常の意思決定を支援します。

監督人

後見人の業務を監督し、対象者の権利が適切に保護されているかを確認します。

家庭裁判所

後見人や監督人を指定し、関連する手続きを監督します。

法律専門家の役割

弁護士や法律専門家は、成年後見制度の適用において重要な役割を果たします。彼らは、申立ての準備、適切な後見人の選定、対象者やその家族の権利保護に向けた助言を提供することが期待されます。

成年後見申立ての法的要件

成年後見申立てには、厳格な法的要件が伴います。ここでは、対象者の判断能力の不足、保護の必要性、後見人の選定基準など、申立てに必要な法的基準を詳細に解説します。法律専門家がこれらの要件を深く理解し、クライアントへの助言やサポートを適切に行うための基礎知識を提供します。

法的要件の概要

成年後見制度の申立てには、特定の法的要件が必要です。これには、対象者の判断能力の不足、保護の必要性、適切な後見人の選定などが含まれます。

判断能力の不足

医学的評価

対象者の判断能力の不足を医学的に証明することが必要です。これは、医師の診断書によって裏付けられるべきです。

法的基準

判断能力の不足は、法律上の基準に基づいて評価されます。

保護の必要性

申立てでは、対象者が法的保護を必要とする具体的な理由を明確にする必要があります。これには、財産管理の困難さや、日常生活での意思決定の問題などが含まれることがあります。

後見人の選定

適格性

後見人は、法的な要件を満たし、対象者の最善の利益を代表する能力があることが求められます。

家庭裁判所の役割

最終的な後見人の選定は、家庭裁判所によって行われます。

成年後見制度の申立て手続き

成年後見申立ての手続きは複雑で、法律専門家の精密な対応を要求します。ここでは、申立てプロセスの各ステップ、必要な書類の準備、裁判所への提出方法、および審査プロセスに関する重要な情報を詳述します。専門家がクライアントに最適なサポートを提供するための実務上のポイントにも焦点を当てます。

申立てプロセスのステップ

成年後見の申立て手続きは、以下のようなステップで行われます。

  1. 書類の準備

    対象者の医学的評価書、家族の意見書、財産目録などの必要書類を準備します。

  2. 申立書の作成

    対象者の状況と後見人指定の必要性について詳細に記載します。

  3. 裁判所への提出

    必要書類と共に申立て書を家庭裁判所に提出します。

  4. 審査のプロセス

    裁判所が書類を審査し、必要に応じて関係者を聴取します。

実務上の注意点

書類の正確性と完全性

申立ての成功は、書類の正確性に大きく依存します。詳細かつ正確な情報の提供が必要です。

対象者の利益を優先

申立ては常に対象者の最善の利益を念頭に置いて行うべきです。

法律専門家の役割

弁護士や法律専門家は、申立て手続きの各ステップで重要なサポートを提供します。これには、適切な書類の準備、家庭裁判所への提出、そして対象者や家族へのアドバイスが含まれます。

成年後見制度の費用について

成年後見人にかかる費用について、2つの主要な項目がございます。法定後見を含む成年後見において、これらの費用が発生します。

成年後見の手続きには、いくつかの費用がかかります。主な費用について詳しく解説いたします。

1. 申立てから後見人等が選任されるまでの手続き費用(一時的な費用)

成年後見を開始するためには、申立書類の作成が必要です。以下は、申立てから後見人等が選任されるまでの一時的な費用です。

申立手数料の印紙代(約3400円)

申立手数料800円と登記手数料2600円分の収入印紙が必要です。保佐や補助の場合、代理権や同意権付与の申立を行う場合には、それぞれ800円分の収入印紙が追加で必要です。

郵便切手(約5000円まで)

予納郵券(切手)を裁判所に提出するために必要です。切手の種類や枚数は裁判所ごとに異なり、事前に確認が必要です。

医師の診断書費用(数千円程度)

申立書類に添付するための医師の診断書作成費用が必要です。医療機関ごとに異なります。

本人等の戸籍謄本・住民票費用(数百円程度)

申立書類に必要な本人・申立人等の戸籍謄本・住民票の発行手数料がかかります。

登記されていない旨を証明する書類費用(300円)

後見制度を既に利用していないことを証明するために、「登記されていないことの証明書」の発行手数料が必要です。

鑑定費用(最大10万円程度)

裁判所が精神上の障害の程度を判断するための鑑定費用です。医療機関ごとに異なります。

その他の申立書類にかかる費用

申立時に必要な各種証明書や書類にかかる費用も発生します。具体的な費用は書類や裁判所によって異なります。

成年後見人への基本報酬について

後見人等の報酬額は、家庭裁判所の裁判官が決定しますが、統一された明確な基準が示されているわけではありません。しかし、東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部が2013年1月1日に示した「成年後見人等の報酬額のめやす」(以下「めやす」)に基づいて報酬が決まることが一般的です。基本報酬額は、本人の財産額に応じて以下のように設定されています。

財産額月額報酬額
1000万円未満2万円
1000万円 ~ 5000万円3万円 ~ 4万円
5000万円以上5万円 ~ 6万円

通常、後見人等は毎年、家庭裁判所への定期報告時に報酬付与の申立を行い、報告期間1年分の報酬を決定された金額を本人の財産から受け取ることになります。

付加報酬について

「めやす」では、特別困難な事情がある場合に、基本報酬に付加報酬が支払われることがあります。特別困難な事情とは、例えば遺産分割協議の代理権行使や不動産の売却など、通常の後見業務以上に難しい場合を指します。この場合、基本報酬額に50%の範囲内で相当額の報酬が追加されます。報酬額は家庭裁判所から決定されます。

法律専門職が後見人の場合

弁護士や司法書士などの法律専門職が後見人に選任された場合、報酬額は通常の後見人と同じ「めやす」に基づいて設定されます。法律専門職であっても、報酬の基本額に変更はありません。ただし、親族が後見人に選任された場合、親族は報酬を受け取ることができますが、通常は辞退する傾向にあります。この場合、成年後見監督人の報酬を除いて、後見人の報酬は発生しません。

成年後見監督人への報酬

成年後見監督人(以下「監督人」といいます。)は、家庭裁判所に代わって後見人の業務を監督する立場の者です。監督人には、弁護士や司法書士などの法律専門職が就くことが多いと思われます。監督人が選任された場合、報酬額は通常、月額1~3万円程度とされています。

成年後見人の申立て費用が支払えない場合の対処法

成年後見の申立てに必要な費用が支払えない場合、裁判所は申立てを却下するか、申立てを取り下げるように促すことがあります。しかし、経済的な事情で成年後見制度を利用できない場合にも、以下のような助成制度を検討することができます。

成年後見制度の費用助成を検討する

経済的に困難な状況にある方々向けに、成年後見制度の費用助成を行う制度が存在します。以下はその一部です。

市区町村の支援事

各市区町村では、「成年後見制度利用支援事業」などの名称で、申立書の作成や後見人への報酬に対する支援を提供しています。具体的な詳細や条件は、本人の居住地の市区町村に直接問い合わせてください。

法テラス

法テラスは、弁護士や司法書士に支払う申立書作成の報酬や実費の費用立て替え制度を提供しています。ただし、これは費用立て替え制度であり、通常は分割返済が必要です。利用条件や詳細については、各制度ごとに異なるため、事前に条件や利用可能性を確認することをおすすめします。

まとめ

このコラムでは、成年後見制度の申立て方法と費用について詳しく見てきました。適切な知識と理解は、クライアントに最良のアドバイスを提供するために不可欠です。成年後見制度を扱う際には、この情報が参考になることを願っています。さらに詳しい情報やサポートが必要な場合は、ご連絡ください。

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