祭祀主宰者

author:弁護士法人AURA(アウラ)
男性

祭祀主宰者の資格,指定の効果

① 「祭祀主宰者」として指定する者は相続人に限定されません。

内縁の妻が祭祀主宰者となることは珍しくありません。

② 拒否・辞退

祭祀主宰者は葬儀履行などの積極的義務はありませんが,祭祀主宰者として指定された者が指定を望まないこともあり得ます。

しかし,祭祀主宰者の指定を放棄・辞退することはできません。指定された者は拒否できないのは,加重な負担を負うわけではなく,拒否を認める規定がないというのが主な理由でしょう。

ただし,調停・審判では,拒絶・反対する者を指定することはありません。

被相続人による指定

① 被相続人による祭祀主宰者の指定の方法

祭祀主宰者の指定は,被相続人による指定が最優先です。
被相続人による指定には,その方法は限定されておらず,遺言,手紙,口頭,メール・メッセンジャー・SNS,各種の契約書(夫婦財産契約等)への記載などの方法があります。

記載のフォーマットは特に限定がなく,被相続人の意思が読み取れればよいのです。例えば,「墓守は太郎に任せる」というメッセージ,祭祀供用物の生前贈与・遺贈などです。

② 祭祀財産の生前贈与・遺贈

被相続人による祭祀主宰者の指定は明確な意思表示でなされないこともあります。被相続人による祭祀財産の生前贈与や遺贈は,所有権の移転効果があり,被相続人による祭祀主宰祭祀財産の生前贈与・遺言書作成後に事情が変化した場合です。「氏」の変更がなされたケースで,家庭裁判所は,祭祀財産承継者=所有者とは別の人を祭祀主宰者に指定し,祭祀財産の引き渡しが強制されました。

家裁による指定

被相続人の指定がない場合,相続人で協議して祭祀承継者を決めることになります。
しかし現実に,関係者で『祭祀主宰者』が決められないこともあります。
葬儀の方式や遺骨を引き取る者について話し合いがまとまらない,という状況です。
この場合最終的には家庭裁判所が『祭祀主宰者』を決める手続を利用します。

① 祭祀主宰者指定の審判

「祭祀主宰者」は,相続人の間で協議して決めるのが一般的です。

詳細は,祭祀供用物の承継

しかし,葬儀のやり方や遺骨を引き取る者について話し合いがまとまらないなど,親族の協議では決められない場合,最終的には家庭裁判所で「祭祀主宰者」を決める手続(祭祀主宰者指定の審判)を利用します。

家裁の判断基準は,被相続人に対する慕情,愛情,感謝の気持ちを最も強く持つ者≒被相続人が生存していたのであれば指定したであろう者というものです。

考慮される要素は,次のとおりです。慣習と重複します。
す。

・承継候補者と被相続人との間の身分関係・事実上の生活関係

・承継候補者と祭具などとの間の場所的関係

・祭具などの取得の目的や管理などの経緯

・承継候補者の祭祀主宰の意思や能力

・利害関係人全員の生活状況・意見

② 傾向

・遠い昔の祖先よりも近い祖先

・被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあった者

③ 具体例

それぞれ既に亡くなっているか,それぞれr高齢の場合は次順位に繰り下がります。
・配偶者

・子供

・親or兄弟姉妹

・既婚の娘の配偶者・内縁の妻

④ 長男

旧民法では,長男が家を継ぐ=相続するという制度でしたが,現民法下では,長男を特別視する傾向は弱くなっています。
新民法改正の初期において長男偏重を排斥した判例があります。

⑤ 内縁の妻

内縁の妻が祭祀主宰者となることは多いでしょう。被相続人が内縁の妻に祭祀を承継させる遺志があったと認定されるからです。

⑥ 家・家業の承継とのリンク

一般的に家ないし家業の後継者は「祭祀主宰者」として妥当と判断される傾向があります。例えば,被相続人が事業・家業を営んでいた場合,事業ないし家業を継続している者が指定された裁判例があります。

⑦ 被相続人との同居

被相続人の生前に親族のうち1人が同居し,共同で祭祀財産の管理をしていた場合,関係は密接になるのが通常であるため,祭祀主宰者として選択されるでしょう。

⑧ 氏の重視

祭祀主宰者の指定では「氏」(苗字)が同一の者が指定される傾向があります。

「氏」が異なる者が祖先の祭祀を承継することは,旧来の風俗に反するからでしょうか。
これに対しては,新民法は旧来の風俗を公的に踏襲することを意図的に避けているとの批判もあります。

※氏の変更は,婚姻・養子縁組,離婚・婚姻取消・離縁・縁組取消・死別・姻族関係終了などによる「復氏」によります。

⑨ 共同承継・分割承継

祭祀主宰者は,通常1人が単独で指定されます。

特別の事情がある場合,2人以上の者が同一権限として(共同承継)又は権限を分割して(分割承継)指定されることがあります。

老夫婦

祭祀主宰者と喪主

① 喪主

宗派により,葬儀をどのようにするのかで深刻な対立が生じることがあります。

葬儀の主宰者を喪主というので,葬儀の方式を決定するのは喪主です。
喪主には,葬儀の宗派・手続について判断・決定する裁量があります。

② 祭祀主宰者の指定3 『喪主』と『祭祀主宰者』の関係|同一とは限らない

〈葬儀後〉

「祭祀主宰者」は,葬儀が終わった時に指定されることが多いため,既に喪主となっている者が「祭祀主宰者」に指定されやすいとはいえます。

ただし,別人が指定されることもあります。例えば,被相続人とは,生前約20年間別居し,被相続人との行き来もなかった長男が葬式の喪主を務めた場合であっても,長期間にわたり被相続人と同居し,その看病や先祖の法要を行っており,位牌・被相続人の遺骨を保管している次男を祭祀主宰者として指定した裁判例があります。
〈葬儀前〉

葬儀の完了前に祭祀主宰者の指定がなされることもあります。
この場合,祭祀主宰者として指定された者が喪主となって葬儀を行うのが通常ですが,祭祀主宰者には,葬儀の履行義務はないので,祭祀主宰者が葬儀を行わない場合,別の者が喪主となります。

氷山

その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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