相続人不存在

author:弁護士法人AURA(アウラ)

相続人不存在による遺産の国庫帰属

人が亡くなった場合、原則として相続人が財産を承継します。

しかし相続人が一切存在しないという状態で亡くなる方がいます。

この場合は、最終的に国が遺産を承継=国庫に帰属します。

本記事では国庫帰属の基本的な内容を説明します。まずは、国庫帰属の規定の内容をまとめます。

相続人不存在の典型例

相続人が不存在となる状況は、孤独な一人暮らしの方が亡くなられた場合というイメージがありますが、実際には、親密な同居人(民法上の相続人ではない。)がいるとか、親族はいるけど相続放棄をしたというケースがよくあります。

相続人以外との同居

故人が生前、親密な者(従兄弟や内縁の妻)と同居していた(孤独な一人暮らしではなかった)。

相続放棄

相続人であった者の全員が相続放棄をしたことにより、法的に相続人が存在しない状態となった。

共有者の相続人不存在

例えば、不動産の共有者の1人が亡くなり、その相続人が存在しないときは、国庫帰属にはなりません。

他の共有者が持分を承継する結果となります。

特別縁故者(概要)

内縁の妻(夫)は、法律上の相続人ではありません。

しかし、相続人が存在しない場合に限って、家庭裁判所が特別縁故者と認める手続があり、特別縁故者として認められた場合、遺産の承継が認められます。

相続人不存在による遺産の承継の優先順序

相続人が不存在の場合の遺産の承継に関する優先順序は、特別縁故者への財産分与が最優先で、次に他の共有者への帰属となります。

最後の手段として、国庫帰属が位置づけられます。特別縁故者の財産分与は、家庭裁判所の判断・裁量があるため、特別縁故者を優先にすると個別事情に応じた家裁のコントロールが可能です。

相続人不存在による共有持分の権利変動の時点

前記の優先順序を元にすると、共有者が亡くなり、その相続人が存在しない場合でも、すぐに他の共有者に持分が帰属するわけではありません。特別縁故者への財産分与がないことが決まって初めて他の共有者が持分を取得します。つまり、他の共有者の持分取得は、相続人不存在が確定した時ということになります。判例がこの見解を示し、登記実務でも、これを登記原因日付とし、登記原因を「特別縁故者不存在確定」としています。

これを前提とすると、相続財産管理人が選任されている状況でも、特別縁故者への財産分与をしないことが確定していない時点では、相続財産法人が共有持分を有する(共有者である)ということになります。そこでこの時点で共有物分割請求や(共有持分放棄に伴う)登記引取請求をする際は、相続財産法人が当事者(被告)となります。

※共有者に相続が開始し、相続人が不存在である場合、相続人の不存在が確定し、かつ特別縁故者への財産分与がなされないことが確定したとき、具体的には、民法958条の3第2項の期間の満了の日の翌日または期間内に同条1項の請求があり、かつ、分与しないという内容の審判が確定した日の翌日が権利変動の時点となる(最高裁平成元年11月24日)。

知的財産権

特許権、著作権、商標権、実用新案権などのような知的財産権は、相続人が不存在の場合は権利が消滅するので、これらの権利の国庫帰属はありえない

相続財産管理人が遺産の管理や処分を行う(概要)

相続人が存在しない場合、最終的に国庫帰属となりますが、実際には、権利を国に引き継ぐ手続を行う必要があります。しかし、所有者は既に亡くなっていますし、権利を承継する相続人も存在しません。

そこで、相続財産管理人が選任される制度があります。

相続財産管理人が、登記手続や引き渡しなどの国庫への引き継ぎや、賃貸不動産などの暫定的な管理業務を行います。

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