共有関係を解消(離脱)する方法
共有持分の放棄は,共有関係から離脱する方法として活用されます。これ以外にも,共有関係の解消のための制度はあります。
詳細は,共有関係を解消(離脱)する方法
共有関係から離脱する方法として,共有持分の放棄があります。
共有持分の放棄は,使われていない又は使われてはいるけれどマイナス(負担)の方が大きい状態の共有不動産です。
〈事例〉
土地がA・B・Cの共有になっている。
一部は貸地になっている。→少しは地代収入(固定資産税と同じくらい。)があるが,共有地の大部分は荒れ地である。
共有関係から抜けたい。
共有持分放棄の意思表示
共有持分の放棄は,意思表示により効果を生じます。この意思表示は,遺言と同様,相手方のない単独行為です。したがって,共有持分放棄の意思表示の相手方は,理論的には必要ありません。
しかし実際には,他の共有者に対して「共有持分を放棄する。」という通知(内容証明郵便)を出すことができ,実際もそうします。他の共有者への権利帰属が生じ,登記手続を行う必要性が生じるからです。
実際に共有持分放棄を活用する場面では,複数の共有者が同時に持分放棄をするということがよくあります。持分放棄をする共有者の中に未成年者が存在し,親権者が法定代理人として放棄の意思表示をするということもあります。ここで親権者も共有者であり,持分放棄をする場合,利益相反に該当するので特別代理人の選任が必要です。
共有持分放棄による権利変動
放棄した者の共有持分は消えます。
その分は,他の共有者に帰属するので,他の共有者の持分が増えます。
共有持分の放棄による他の共有者が持分取得は,原始取得です。
通謀虚偽表示との関係
共有持分放棄の意思表示(通知)は,相手方のある意思表示として扱われるため,放棄の意思表示を行った者と放棄の意思表示を受領した者が通謀して虚偽の意思表示をした場合,通謀虚偽表示の規定の類推適用が認められ,その意思表示は無効とされます。
遺産共有における共有持分の放棄
①相続が開始して複数の相続人の間で遺産分割が未了である場合は,遺産共有という状態になります。遺産共有である財産についても,共有持分放棄をすることができます。
詳細は,遺産中の特定財産の処分行為
遺産共有と物権共有の混在
②共有持分放棄により他の共有者が持分を取得するのは原始取得です。譲渡(承継取得)とは異なります。
しかし,登記面では,譲渡(承継取得)と同様,移転登記が行われます。
課税の面でも譲渡と同じ扱いとなります。
共有持分放棄と担保物権
担保物権の負担のある共有持分について共有持分放棄がなされた場合,他の共有者の持分取得は原始取得である以上,担保物権は消滅するはずです。しかし,共有持分放棄の場合には,
外的に担保物権は存続する(担保物権により制約されたままの持分が他の共有者に帰属する。)ことになります。
農地
農地の譲渡については農地法上,農業委員会の許可が必要です(対抗要件とされています。)
しかし,共有持分の放棄による持分の移転は原始取得であるという理由で,農地法の許可は不要と解釈されています。実務では登記申請において許可の証明書の添付は必要ないことになります。
区分所有権
区分所有建物は,専有部分(建物)と敷地利用権が一体となっているので,分離処分が禁止されます。
敷地利用権の内容は,所有権の共有持分権や賃借権の準共有持分権です。そこで,専有部分や敷地利用権の(所有権や)共有持分の放棄ができるかという問題があります。
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