仮想通貨に対する課税

author:弁護士法人AURA(アウラ)
ビル群

消費税

近年,仮想通貨として目にあるいは耳にしたことのある「ビットコイン」について,そのビットコインを使用したことによる消費税は,非課税とされています(消費税法施行令9条4項)。

ビットコインは消費税法施行令の定義に規定する仮想通貨に該当するため、消費税は非課税として扱われるわけです。

ちなみに改正施行は、附則で以下のように規定されています。

所得税

 個人がこのビットコインを使用した場合の課税関係つまり所得税の取扱い(とりわけ所得区分)については,国税庁サイト上の“タックスアンサー”に明示されました。

 ここでは,以下のように明示されています。

  • ビットコインを使用することで生じた利益:所得税の課税対象
  • ビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益):事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き,原則として,雑所得に区分

所得区分は,原則として雑所得,ただし各種所得の起因となる行為に付随して生ずる場合はその起因となる各種所得に該当するということになります。

相続税

仮想通貨(暗号資産)には財産的な価値があるため、仮想通貨を相続した場合は相続税が課税されます。他の資産と同様に、相続発 生日(通常は被相続人の死亡日)の価額にもとづいて申告する必要があります。

相続税評価額

仮想通貨にはさまざまな種類があり、取引の数量や頻度にも差がみられます。

市場で十分な数量と頻度の取引が行われている仮想通貨は、客観的な価値が明らかになっていると考えられます。そのため、仮想通貨の相続税評価額は、活発な市場があるかどうかによって次の方法で算定します。

  • 活発な市場がある仮想通貨:仮想通貨交換業者(取引所や販売所)が示す相続発生日の取引価格で評価
  • 活発な市場がない仮想通貨:仮想通貨の内容や性質、取引実態などを勘案して個別に評価

なお国税庁は、どの仮想通貨が「活発な市場がある仮想通貨」であるか明示していません。

取引所や販売所で十分な数量と頻度の取引が行われ、継続的に価格情報が提供されている仮想通貨であれば、活発な市場があるものとして評価します。

仮想通貨を交換業者に預けている場合は、交換業者に依頼すれば残高証明書が発行されます。

残高証明書に記載された取引価格から相続税評価額を求めることもできます。

パスワード不明で仮想通貨を取得できないのに相続税がかかる可能性も

仮想通貨の相続では,電子データに特有の問題点があります。

ここでは,仮想通貨を相続したにもかかわらず,パスワードが不明で実際には仮想通貨を取得できないケースについて考えます。

仮想通貨を保管するウォレットのパスワードがわからなければ,そこから仮想通貨を引き出すことができません。しかし,パスワードがわからずに取得できない仮想通貨にも相続税が課税される可能性があります。

実際に取得できない仮想通貨に相続税が課税されると,財産が得られないのに税金だけ納めるという不都合が生じます。

一方,パスワードがわからないことだけを理由に仮想通貨を相続税の対象から外してしまうと,課税の公平性が損なわれる恐れがあります。相続人は本当にパスワードがわからないのか,あるいはわからないふりをしているだけなのか確認のしようがないからです。

法整備が追いついていないため断定的なことはいえませんが,パスワードが不明で取得できない仮想通貨にも相続税が課税される可能性があることは知っておきましょう。

仮想通貨と相続税についてさらに詳しい内容は,下記の記事でお伝えしています。

TAX HAVEN

仮想通貨の相続手続

① 具体的な相続手続き

仮想通貨(暗号資産)はインターネットで取引される電子データであるため,相続人にとってその存在がわかりにくくなっています。相続人が仮想通貨を見つけられなければ、大切な財産が承継されずに失われることさえあります。

ここでは,亡くなった人が持っていた仮想通貨を探し出す方法と,仮想通貨の相続手続きをご紹介します。

② あらゆる方法で仮想通貨を探し出す

仮想通貨を探し出すには,まず、故人が生前に「仮想通貨で儲かった」とか「損をした」とかいう話をしていなかったか思い出してみます。

ほかには,故人が残した次のようなものも手掛かりになるでしょう。

  • 銀行の入出金記録(仮想通貨の購入資金の送金,売却代金の入金)
  • 郵便物(取引所の口座にログインするための情報が書かれた用紙など)
  • ボールペンなどのノベルティ(取引所から粗品としてもらった可能性がある)
  • パソコンやスマートフォンにある取引ツール
  • ハードウェアウォレット(仮想通貨を保管する専用端末)

このように,あらゆる方法で仮想通貨を探し出すことが相続手続きの第一歩となります。

しかし,銀行や証券会社とは異なり,仮想通貨の取引所は名前から仮想通貨を扱っていることを連想しづらい場合があります(日本にある主な仮想通貨取引所の名称は下記を参照してください)。

また,相続人がハードウェアウォレットを見つけても,仮想通貨が保管されていることに気がつかないかもしれません。

日本の主な仮想通貨取引所(仮想通貨交換業者)

  • Coincheck(コインチェック)
  • bitFlyer(ビットフライヤー)
  • DMM Bitcoin(DMMビットコイン)
  • SBI VC Trade(SBI VCトレード)
  • TAOTAO(タオタオ)
  • GMOコイン

(順不同)

③ 取引所にある仮想通貨の相続手続

故人が取引所(仮想通貨交換業者)を通じて仮想通貨を取引していた場合は,相続人が取引所に連絡すれば相続手続きができます。

取引所の連絡先は,郵便物があればそれを手掛かりに,取引所の名前だけがわかればインターネットで検索して確認します。

取引所にある仮想通貨の相続手続きについては,取引所ごとに定められています。

参考までに以下に手続きの一例をあげますが,取引所が特定できたら,まずは取引所へ連絡しましょう。

    

【相続手続きの一例】

  1. 相続人の代表者(代表相続人)が取引所に故人の死亡を届け出ます。
  2. 取引所から死亡日現在の仮想通貨の残高が記載された「残高証明書」が送られます。
  3. 代表相続人は「残高証明書」を確認して,相続する旨を取引所に届け出ます。
  4. 取引所は故人の仮想通貨を売却し,売却代金を代表相続人の預金口座に送金します。

預貯金や株式などの相続手続きと同様に、届け出には次の書類が必要です。

詳細は取引所の指示に従うようにしましょう。

  • 住民票除票など死亡の事実がわかるもの
  • 戸籍謄本,法定相続情報一覧図など相続関係がわかる書類
  • 代表相続人の本人確認書類
  • 取引所所定の届出書類
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • (必要に応じて)遺言書、調停調書、審判書

④ 取引所以外で保管されている仮想通貨の相続

パソコンやスマートフォンのウォレットやハードウェアウォレットなど,取引所以外で保管されている仮想通貨の相続は,どこかに届け出る必要はありません。金庫に入っている現金を相続するのと同じと考えればわかりやすいでしょう。

ただし,端末のパスワードとウォレットのパスワードを解除する必要があります。

いずれかのパスワードがわからなければ仮想通貨を引き出すことはできません。

生前対策

仮想通貨(暗号資産)は,所有する本人でなければ実態を把握することが困難です。

財産を守るためのパスワードも,相続のときには障害になってしまいます。

大切な財産である仮想通貨を確実に相続させるためには,相続があることを念頭に生前から準備しておくことが重要です。

具体的には,仮想通貨がどこにあるか,相続があったときにどうすれば仮想通貨を引き出せるか(または換金できるか)といったことを,紙に書いたメモで残しておきます。わざわざ紙に書くのは,相続人に見つけてもらえるようにするためです。

仮想通貨を保管している手段によって,以下のような内容を残しておくとよいでしょう。

保管の手段生前の対策
取引所以下の内容を書いたメモを残しておく。どの取引所に口座を開設しているか相続時の手続きはどうすればよいか
パソコン、スマートフォン端末やウォレットのパスワードなど、仮想通貨を引き出す方法を書いたメモを金庫などで保管する。
ハードウェアウォレット以下の内容を書いたメモを金庫などで保管する。端末の形状や保管場所仮想通貨を引き出す方法(パスワードなど)
ペーパーウォレット仮想通貨を引き出す方法を書いたメモを,ペーパーウォレットとは別の場所で保管する。

なお,仮想通貨は相続税法で物納が認められる財産に規定されていないため,仮想通貨で相続税を物納することはできません。

最新情報のチェック

仮想通貨(暗号資産)は財産としての価値を持つものであり,故人から相続すれば相続税が課税されます。

先に述べたように電子データであるため相続人が取得できない恐れもあるという問題も指摘されており,今後法整備が進む可能性があります。

そのため,相続財産に仮想通貨が含まれる場合は,その時点での最新の情報をチェックすることが優先事項となります。更に相続税が発生する場合は,税法に関する最新情報を確認しておく必要があります。

不安がある場合には,相続税法に詳しい税理士に相談すると良いでしょう。

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その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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