地域を支える「民生委員・児童委員」の役割と活動

author:弁護士法人AURA(アウラ)
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地域社会において、生活に困難を抱えたり、支援を必要とする人々を支える存在として、民生委員と児童委員が活躍しています。彼らは、障害のある人々、高齢者、子育て世代、経済的に困難を抱える家庭など、多岐にわたる人々への支援を担う重要な役割を果たしています。しかし、彼らの具体的な活動内容や役割、相談方法、トラブルに遭った際の対処法について、多くの人々が知識を持っていないこともあります。このコラムでは、民生委員と児童委員について、詳しく解説していきます。

身近な支援者、民生委員と児童委員の役割と活動

身の回りの地域社会の中で、民生委員と児童委員という存在があります。彼らはどのような役割を果たしているのでしょうか。

民生委員の役割と活動

民生委員は、厚生労働大臣から指名された地域の支援者です。彼らは障害のある人、高齢者、生活保護を受けている人、子育て世代、妊産婦、母子家庭、父子家庭などの世帯に対して、住民の視点で相談に応じて援助を行う役割を果たします。また、児童委員の役割も兼ねており、民生委員法に基づいて非常勤の地方公務員として活動しています。

児童委員の役割と活動

児童委員は、地域の子供たちの健やかな成長と福祉を守るための存在です。彼らは子供たちを見守り、保護者や母親の相談を受け、支援を提供する役割を担当します。また、主任児童委員と呼ばれる役職もあり、児童に関する専門的な支援を行っています。

活動の歴史と背景

民生委員制度の歴史は古く、1917年に岡山県で始まった「済世顧問制度」が起源です。その後、1928年に「方面委員制度」が全国に広がり、1946年には現在の民生委員に繋がる制度が確立されました。

具体的な活動内容

民生委員の主な活動

  1. 地域住民の生活状態の調査や見守り
  2. 生活に関する相談への応対と助言
  3. 関連機関や施設との連携と調整

児童委員の主な活動

  1. 子どもたちや保護者の生活や環境の把握と支援
  2. 見守りが必要な子ども・家庭への援助
  3. 子どもの健やかな成長環境の改善に努める

基本姿勢

彼らは次の3つの基本姿勢を守って活動しています。

  1. 社会福祉の増進に貢献する
  2. 個人の尊重とプライバシー保護
  3. 政治的な利用を避ける

身近な支援者として、民生委員と児童委員は地域社会において大切な役割を果たしています。

民生委員の活動費について知ろう

無報酬ながら支援を続ける民生委員

地域社会に貢献する民生委員たちは、無償で支援活動に従事しています。しかし、その活動のために自治体から提供されるのが「報酬」ではなく「活動費」です。活動費の具体的な仕組みについて、わかりやすく解説します。

実費支給の活動費

民生委員の活動費は、彼らの支援活動にかかる交通費や電話代、研修参加費などの実費を賄うための支給金です。この活動費は、報酬とは異なり、活動に必要な経費をカバーするためのものです。

自治体ごとに異なる額

活動費の支給額は、自治体ごとに異なります。年間の支給額は3万円台から9万円台まで幅広く変動します。ただし、一般的な平均は年間7万円前後と言われています。この額は、月額換算すると約6500円程度です。支給額は年間の総額として支給される点に留意しましょう。

活動の熱心さによる経費増加

一部の熱心な民生委員は、携帯電話や交通機関を活用し、積極的に研修に参加することで、年間で10万円を超える経費がかかることもあります。そのため、彼らの活動は基本的に「赤字」の状態となることが多いです。ただし、自治体によっては実費精算方式が採用されており、支給額は固定されている場合もあります。

支え合いの大切さ

民生委員たちは無償で様々な支援活動に取り組んでいます。その中で活動費を駆使し、地域の人々を支えています。彼らの尽力に感謝し、地域社会の支えとなる役割に注目することは大切です。

市民参加の一翼を担う、民生委員・児童委員になるには

現在、全国各地で活躍する約23万人の民生委員と児童委員。彼らは、厚生労働大臣から地域福祉の責任を担い、尽力するボランティアたちです。彼らの活動は無給で行われており、民生委員法第10条によって「給与を支給しない」と規定されています。そのため、多くの方が仕事や子育てに忙しい中で貢献しているのです。委嘱の期間は3年ですが、再任も可能です。

民生委員や児童委員は、地域内での「相談の窓口」や「連絡の役」として活躍していますが、専門職ではありません。そのため、特別な資格や専門知識は不要です。ただし、相談内容がプライバシーにかかわることもあるため、守秘義務が課せられています。

彼らの任務には資格は不要ですが、厚生労働大臣からの委嘱が必要です。このプロセスでは、都道府県知事が市町村の民生委員推薦会から、地域福祉への理解や情熱を持ち、地域の状況に通じていると認められた候補者を推薦し、地方社会福祉審議会の意見を聞いたのち、厚生労働大臣が最終的な委嘱を行います。

児童福祉法に基づき、民生委員は児童委員も兼任します。また、主任児童委員は、児童委員の中から厚生労働大臣が選定します。彼らは地域社会の一端を担い、市民参加の重要性を示しています。

地域の支援者、民生委員・児童委員が関わる人々の実例

現代社会では、少子化や核家族化といった影響で、地域とのつながりが希薄になりつつあります。こうした中で、悩みや問題を抱えながらも孤立してしまう人々が増えています。

民生委員や児童委員は、地域社会の中で信頼される相談役として活動しています。自身の問題を深刻化させずに、適切な支援を受けるためにも、民生委員との関わりを持つことが重要です。

以下に、民生委員や児童委員が関わりが深いケースをいくつか紹介します。

障害のある人のいる世帯

障害を抱える人やその家族が生活上の困難に直面した際、民生委員や児童委員のサポートを受けることができます。

高齢者世帯

高齢者が孤立せずに生活を維持できるよう、民生委員や児童委員が支援を提供します

生活保護を受けている世帯

生活が困難な状況にある家庭に対して、民生委員や児童委員が適切なアドバイスや援助を行います。

子どものいる世帯

子育てに関する悩みや相談に対して、児童委員がサポートを提供します。

妊産婦のいる世帯

妊娠や出産に関する情報提供や支援を行い、安心して過ごせるように手助けします。

母子・父子家庭

ひとり親家庭が直面する悩みや困難に対して、民生委員や児童委員が支援を行います。

その他福祉に関わる問題を抱える世帯

さまざまな福祉に関する問題を抱える人々に対して、民生委員や児童委員が情報提供や援助を行います。

これらの事例を見ると、誰もが様々な福祉の面で支援が必要な状況に直面する可能性があることが分かります。民生委員や児童委員は、そのような人々の力強い味方として、地域社会において重要な存在です。

困りごとは、民生委員・児童委員に相談してみましょう

高齢者や障害者への支援が必要な時、また子育てや介護に関する不安がある時、身近な支援を求める場合、地域の民生委員や児童委員に相談することができます。

具体的な相談の際は、お住まいの市区町村に連絡をしてみましょう。そこから、民生委員や児童委員と繋がることができます。さらに、これらの支援者について詳しく知りたい場合も、市区町村に問い合わせてみることをおすすめします。

しかし、ただ単に「相談する」と聞いても、何を相談したら良いのか、相談の結果何が待っているのか、具体的なイメージを持ちにくいかもしれません。こうした疑問を解消するために、地域の民生委員や児童委員がどのように活動しているか、具体的な活用方法をご紹介しましょう。

相談から支援への継続

生活上のさまざまな悩み、障害や病気、介護、子育て、経済的な困難などに関する相談を受けるのが、民生委員・児童委員の役割です。しかし、彼らの役割は相談だけにとどまりません。必要な場合には、行政機関を含む専門機関への案内や適切な福祉サービスの提供まで、きめ細かなサポートを行います。

地域全体の安寧を見守る

高齢の一人暮らしの方や高齢者夫婦を訪問し、相談を受けたり健康状態を確認したりする役割だけでなく、詐欺被害の予防啓発なども行います。さらに、市町村によっては新生児の家庭を訪問して子育て支援の情報提供を行うなど、災害時の要配慮世帯の把握にも力を入れています。

孤立を防ぐ

地域社会において、誰もが孤立しないよう、居場所づくりを目指すために、民生委員・児童委員がサロン事業に取り組んでいます。高齢者や子育て中の親、障害児の親などを対象にしたサロンがあり、安心感と交流を提供しています。

※サロンの詳細は市町村によって異なりますので、参加を希望される方は直接問い合わせてみてください。

安心と安全の確保

交通事故や犯罪から子どもたちを守るため、民生委員・児童委員が登下校時の通学路見守りなどを行っています。長期休暇前には学校と連携し、休暇中の安全な過ごし方について話し合ったり、災害時の要配慮世帯の避難支援態勢を整備するために行政機関と協力しています。

子どもたちの成長をサポート

学校や子育て支援センター、保健所、児童館などと連携し、子どもたちとその保護者をサポートするだけでなく、地域の子供向けイベントやプロジェクトにも協力しています。地域全体で子どもたちの成長と安心な環境づくりを支えています。

民生委員とのトラブル時の対処法

民生委員や児童委員は、地域社会で大事な相談パートナーとなる存在ですが、中にはトラブルに巻き込まれるケースもあるようです。主なトラブルの要因は、相談内容が彼らの対応範囲外だった場合です。

  • 金銭の貸し借り
  • 子供の一時預かり
  • 保証人になること
  • 近隣トラブルの調停
  • 貴重品や鍵の預かり
  • 医療行為における同意
  • 身体介助や家事の手伝い
  • 各種証明書の発行

これらの問題に関しては、民生委員や児童委員の業務外ですが、こうした相談事例が増えているのが現状です。それに対して「解決してもらえると期待していたが、できなかった」といったトラブルが生じることもあります。

しかし、適切な相談を行ったにもかかわらず適切なサポートを受けられない場合、市区町村の福祉課など、民生委員や児童委員を担当する機関への問い合わせが求められます。

誰も取りこぼさないサポート体制を構築

民生委員・児童委員は、地域全体を見守り、誰もがサポートされる仕組みを提供するために活動しています。子育てや介護、経済的な悩みなどを抱えた際には、民生委員や児童委員に相談することがおすすめです。彼らには秘密保持義務があり、プライバシーを守りながら相談できる環境が提供されています。

「こんなことを相談しても大丈夫かな」とためらうこともあるかもしれませんが、民生委員・児童委員はそうした悩みに対しても耳を傾けてくれます。福祉に関する悩みを抱えているなら、最初に市区町村に連絡し、民生委員・児童委員の支援を受けてみることを検討してみてください。解決への一歩が踏み出せるかもしれません。

まとめ

地域社会の中で支え合い、誰もが安心して生活できるよう尽力している民生委員と児童委員の存在は、決して小さなものではありません。彼らは相談役としてだけでなく、適切な支援へとつなげる重要な架け橋でもあります。さまざまなトピックについて詳しく解説してきましたが、ぜひこれを参考にして、自分や周囲の方々が困難を抱えた際に、民生委員と児童委員のサポートを受ける一歩を踏み出してみてください。地域社会の結びつきをより強固なものにするために、彼らの存在と役割を知ることが大切です。

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