日本では,1961年(昭和36年)から国民皆保険制度が整備されました。国民はいずれかの医療保険に加入することが原則ですが,医療保険未加入者は,生活保護制度の医療扶助により医療を受けることができます。
医療保険制度の概要
75歳未満 被用者用保険(被扶養者制度あり)
健康保険
協会けんぽ
保険者 | 被保険者等 | 加入者 |
---|---|---|
全国健康保険協会 | 協会けんぽの適用事業所に使用されるものとその被扶養者 | 約4044万人 |
組合健保
保険者 | 被保険者等 | 加入者 |
---|---|---|
健康保険組合 | 健康保険組合に加入している事業所に使用されている者とその被扶養者 | 約2884万人 |
日雇特例被保険者
保険者 | 被保険者等 | 加入者 |
---|---|---|
全国健康保険協会 | 日々雇い入れられてる者や2ケ月以内の期間を定めて使用される者とその被扶養者 | 約1.7万人 |
船員保険
保険者 | 被保険者等 | 加入者 |
---|---|---|
全国健康保険協会 | 船舶所有者に使用される者とその被扶養者 | 約12万人 |
各種共済
各種共済の加入者は合わせて約855万人
国家公務員
保険者 | 被保険者等 |
---|---|
20共済組合 | 常勤の国家公務員とその被扶養者 |
地方公務員
保険者 | 被保険者等 |
---|---|
64共済組合 | 常勤の国地方公務員とその被扶養者 |
私学教職員
保険者 | 被保険者等 |
---|---|
1事業団 | 学校法人等に使用される者とその被扶養者 |
国民健康保険
平成30年度から都道府県も国民健康保険の保険者となりました。都道府県は財政運営の主体としての役割を担い,市町村は引き続き資格管理や保険料の賦課・徴収,保険給付などを行います。
市町村国民健康保険
保険者 | 被保険者等 | 加入者 |
---|---|---|
都道府県・市町村 | 都道府県の区域内に住所を有する者 | 約2660万人 |
国民健康保険組合
保険者 | 被保険者等 | 加入者 |
---|---|---|
国保組合 | 国民健康保険組合の組合員及び組合員の世帯に属する者 | 約273万人 |
75歳以上 後期高齢者医療制度
保険者 | 被保険者等 | 加入者 |
---|---|---|
後期高齢者医療広域連合 | 75歳以上の者,65歳以上75歳未満の一定の障害認定を受けた者 | 1803万人 |
生活保護
被保険者等 | 加入者 |
---|---|
生活保護受給者は,国民健康保険と後期高齢者医療制度への加入が免除される | 171万人 |
被扶養者
被扶養者の要件
※後期高齢者医療の被保険者は,被扶養者にはなれません。
別居でもよい
- 直系尊属
- 配偶者
- 子
- 孫
- 兄弟姉妹
同居のみ
- 三親等以内の親族
- 事実婚の配偶者の父母及び子
居住地の要件(令和2年4月施行)
原則として,日本国内に住所があること。(海外に留学する学生など一時的に海外渡航を行うものは除く)
生計維持の基準
被扶養者の年収が130万円未満(60歳以上,障害者の場合は180万円未満)かつ
- 同居の場合は,被保険者の年収の1/2未満
- 別居の場合は,被保険者の仕送り額によりも少ない場合
保険料
国民健康保険
世帯主には保険料納付の義務があります。
都道府県
- 市町村ごとの国保事業費納付金の決定
- 各市町村の標準保険率を提示
- 給付に必要な費用を全額市町村へ支払う
市町村
- 保険料の賦課・徴収
- 都道府県に国保事業納付金の納付
健康保険
- 全国健康保険協会は,標準報酬月額(1級から50級)に,都道府県ごとに異なる保険料率を乗じて算出する。
- 賞与(年度累計額573万円以上)からも,保険料を徴収する。
- 保険料は,労使折半で負担する
- 介護保険料も一緒に徴収し,保険者が社会保険診療報酬支払基金に納付する。
後期高齢者医療
- 「医療給付費」のうち,約5割を公費(国:都道府県:市町村=4:1:1),約4割を後期高齢者支援金,約1割を保険料で負担
- 保険料は「個人単位」で計算。健康保険の被扶養者にはなれない
- 年金額が18万円以上は,年金から特別徴収される
公費約5割 (国:都道府県:市町村=4:1:1) | |
国保・被用者保険からの支援金 4割 | 保険料1割 |
任意継続被保険者等
任意継続被保険者
- 被用者保険の資格喪質日の前日までに「継続して2か月以上被保険者期間」があり,資格喪失日から20日以内に申請すると,最長2年間被保険者となることができる
- 保険料は,被保険者の事故負担分と事業主負担分をあわせた全額を負担
- 保険給付は,出産手当金と傷病手当金以外は,在職中と同様の給付
資格喪失後の保険給付
資格を喪失する日の前日までに継続して1年以上被保険者であった人は,資格を喪失した際に現に受けていた傷病手当金及び出産手当金を引き受けることができる
保険給付
ここでは、給付の種類と給付内容、保険者の種類をわかりやすく解説します。
療養の給付
療養の給付の範囲
- 診察
- 薬剤または治療材料の支給
- 処置・手術その他の治療
- 病院・診療所への入院
- 在宅で療養する上での管理、療養上のせわ、看護
一部負担割合 | 保険者の種類 | |
---|---|---|
75歳以上 (65歳以上の障害認定を含む) | 1割(現役並み所得者3割) | 被用者、国保、高齢 |
70歳以上75歳未満 | 2割(現役並み所得者3割) | 被用者、国保、高齢 |
義務教育就学〜70歳未満 | 3割 | 被用者、国保、高齢 |
義務教育就学前 | 2割 | 被用者、国保、介護 |
入院時食事療養費
給付内容
入院時の食事療養費のうち、「標準負担額」を除いた費用を給付。
食事療養標準負担額 | 保険者の種類 | |
---|---|---|
一般(市町村民税課税世帯) | 1食/460円 | 被用者、国保、介護 |
市町村民税非課税世帯 | ||
○入院日数90日まで | 1食/210円 | 被用者、国保、介護 |
○入院日数90日以上 | 1食/160円 | 被用者、国保、介護 |
70歳以上での市町村税非課税世帯所得が一定基準以下 | 1食/100円 | 被用者、国保、介護 |
入院時生活療養費
給付内容
療養病床に入院する65歳以上の生活療養費(食費と居住費)
入院時の生活療養費のうち、「標準負担額」を除いた費用を給付
生活療養標準負担額 | 食費 | 居住費 | 保険者の種類 | |
---|---|---|---|---|
一般 | 被用者、国保、介護 | |||
入院時生活療養(Ⅰ) | 1食/460円 | 1日/370円 | ||
入院時生活療養(Ⅱ) | 1食/420円 | 1日/370円 | ||
低所得者 | 被用者、国保、介護 | |||
低所得者Ⅱ | 1食/210円 | 1日/370円 | ||
低所得者Ⅰ | 1食/130円 | 1日/370円 |
保険外併用療養費
給付内容
保険外診療のうち、評価療養、算定療養、患者申出療養を受けたときに、保険診療相当部分が保険適用される。
保険者の種類 | ||
---|---|---|
評価療養 | 先進医療(高度医療を含む)、医薬品の治療に係る診療、薬科基準収載前の承認医薬品の使用など | 被用者、国保、介護 |
算定療養 | 特別の療養環境(差額ベッド)、歯科の金合金等、予約診療、180日以上の入院など | 被用者、国保、介護 |
患者申出療養 | 患者からの申し出を起点として、国内未承認の医薬品等の使用 | 被用者、国保、介護 |
訪問看護療養費
給付内容 | 保険者の種類 |
---|---|
居宅で療養している人が、かかりつけの医師の指示に基づいて訪問看護ステーションの訪問看護師から療養上の世話や必要な診療の補助を受けた場合に支給 | 被用者、国保、介護 |
療養費
給付内容 | 保険者の種類 |
---|---|
保健診療を受けるのが困難なとき(医師の指示により、義手・義足・コルセットを装着した状態など)や、やむを得ない理由での保険医療機関以外で受診した時などの場合に支給(償還払い) | 被用者、国保、介護 |
特別療養費
給付内容 | 保険者の種類 |
---|---|
保険料の延滞により、被保険者資格証明書の交付を受けて、保険医療機関等で療養を受けたときに支給(償還払い) | 国保、介護 |
移送費
給付内容 | 保険者の種類 |
---|---|
病気や怪我で移動が困難な状態で、医師の指示で一時的・緊急的必要があり、移送された場合に支給(償還払い) | 被用者、国保、介護 |
埋葬料(葬祭費)
給付内容 | 保険者の種類 |
---|---|
被保険者が死亡したときに埋葬料(健康保険は5万円)、葬祭費(国民健康保険は自治体により異なる)が支給される。 | 被用者、国保、介護 |
家族療養費等
給付内容 | 保険者の種類 |
---|---|
被扶養者に対する被保険者と同様の給付(傷病手当金、出産手当金を除く) | 被用者 |
出産育児一時金
給付内容
被保険者本人又は被扶養者が出産した時に支給(医療機関等へ直接支払うこともできる)
支給額 | 保険者の種類 |
---|---|
1児につき40万8000円(2022年1月以降) | 被用者、国保 |
産科医療補償制度加入医療機関の場合は1児につき42万円(2022年4月現在、産科医療補償制度加入医療機関の割合は99.9%) | 被用者、国保 |
出産手当金
給付内容
被保険者が出産のため仕事を休み、報酬が受けられない時に支給。
支給額 | 保険の種類 |
---|---|
出産の日(実際の出産が予定日以降の時は予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の日後56日までの期間、欠勤1日につき標準報酬日額の3分の2を支給。 | 被用者 |
傷病手当金
給付内容
病気やケガのために仕事を休み、事業主から十分な報酬を受けられない場合に支給。
支給額 | 保険の種類 |
---|---|
会社を休んだ日が連続して3日間あった上で、4日目以降、休んだ日に対して通算して1年6ヶ月も範囲で、1欠勤につき標準報酬日額の3分の2を支給。 | 被用者 |
医療保険の高額療養費
給付内容
1ヶ月あたりの医療費が、下記の金額を超える場合に、その超えた額を支給。(食費、居住費、差額ベッド代などは含まれない)
所得区分/年齢 | 70歳未満 | 70歳以上(平成30年8月より) 入院+外来(世帯) | 70歳以上(平成30年8月より) 外来(個人) |
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標準報酬83万円以上 課税所得690万円以上 | 252,600円+(医療費−842,000円)×1% | ||
標準報酬53万円以上 課税所得380万円以上 | 167,400円+(医療費−558,000円)×1% | ||
標準報酬28万円以上 課税所得145万円以上 | 80,100円+(医療費−267,000円)×1% | ||
標準報酬26万円以下 課税所得145万円未満 | 57,600円 | 18,000円(144,000円上限/年) | |
低所得者(住民税非課税) | 35,400円 | 15,000又は24,600円 | 8,000円 |
世帯合算 | 同一月内に同一世帯(被保険者と被扶養者の住所が異なっていても合算できる)で21,000円以上の自己負担が複数ある時に世帯合算される。 |
多数該当 | 同一世帯で1年間(直近12ヶ月)に3回以上高額療養費の支給を受けている(多数該当)の場合は、4回目から自己負担限度額が変わる |
特定疾病療養受療証 | 血友病、人工透析を行う慢性腎不全の患者等は、自己負担限度額は10,000円(70歳未満の一部高所得者は20,000万円) |
介護保険の高額介護サービス費
給付内容
介護サービスを利用して支払った自己負担額が、1ヶ月あたり下表の上限額を超えた分を、高額介護サービス費としてhライ戻しされる制度。(ただし、福祉用具購入費、住宅改修費の自己負担額や食費・居住費などは含まれない)
利用者負担段階区分 | 負担上限額 |
---|---|
市民町民税課税世帯 | |
○課税所得690万円以上 | 140,100円/月 |
○課税所得380万円以上 | 93,000円/月 |
○課税所得145万円以上 | 44,400円/月 |
市民町民税世帯非課税世帯 | 24,600円/月 |
合計所得金額及び課税年金収入の合計が80万円以下 | 15,000円/月(個人) |
生活保護受給者 | 15,000円/月(個人) |
医療保険・介護保険の高額介護合算療養費(高額医療合算介護サービス費)
給付内容
各保険における「世帯」内で、医療保険、介護保険の両制度の自己負担額の合計額が1年間に一定の上限額を超えた場合に支給される。(介護保険からは高額医療合算介護サービス費が支給される)
世帯の負担上限額
標準報酬月額/課税所得 | 70歳未満 | 70歳以上 |
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83万円以上/690万円以下 | 212万円 | 212万円 |
53万円以上/380万円以下 | 141万円 | 141万円 |
28万円以上/145万円 | 67万円 | 67万円 |
26万円以下/145万円未満 | 60万円 | 56万円 |
市民町民税非課税 | 34万円 | 31万円又は19万円 |