成年後見制度利用援助事業での申請費用と後見人報酬の助成を受け取る方法

author:弁護士法人AURA(アウラ)

成年後見制度利用援助事業で後見開始の審判の申立てに関する費用と成年後見人等に対する報酬の助成を受けるための方法についてわかりやすく解説します。

成年後見制度とは

超高齢社会において、認知症の方も増加している中でオレオレ詐欺など高齢者が犯罪に巻きこまれるケースや、判断能力の低下した方を狙った犯罪行為も近年とても増加しています。判断能力の低下により、必要でない高額商品を購入してしまうなど1人で財産の管理をするのが難しい状況になっている人も少なくありません。

このような場合に日本では、ご本人の財産を保護するための制度で成年後見制度があります。
成年後見制度には大きく分けて2つあります。

成年後見制度に関する詳しい情報はこちら(弁護士法人AURA:成年後見・任意後見について)をご覧ください。

成年後見制度は大きく分けると法定後見制度と任意後見制度の2つあります。
成年後見制度利用援助事業が関係するのは法定後見制度です。
法定後見制度は、『後見』『保佐』『補助』の3つに分かれています。
これは判断能力の程度など本人の事情に応じて制度を選べるようになっています。

法定後見についての詳しいコラムはこちらをご覧ください。

保佐についての詳しいコラムはこちらをご覧ください。

補助についての詳しいコラムはこちらをご覧ください。

任意後見についての詳しいコラムはこちらをご覧ください。

成年後見制度利用支援事業とは

成年後見制度利用支援事業とは、認知症などにより判断能力が不十分で、かつ、身寄りがないなど親族などによる後見等開始の審判の申立てができない方について、市区町村長が代わって申立てを行ったり、成年後見制度を利用するにあたって費用を負担することが困難な人に対して、自治体が審判の申し立てにかかる費用及び後見人等への報酬の助成を行う事業のことです。

成年後見制度利用支援事業は、高齢者を対象としたものと、障害者を対象としたものとに分けられ、前者は全国1650の市区町村で(実施率:約95%(平成30年度))、後者は全国1630の市区町村で(実施率:約94%(平成30年度))実施されています。

厚生労働省:成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果

市区町村長による後見等開始の審判の申立て

市区町村長による後見等開始の審判の申立てについて

成年後見制度利用支援事業の一つである市区町村による後見開始の審判の申立てについてのポイントは次の通りです。

  • 法定後見制度では、後見等開始の審判(後見開始の審判、保佐開始の審判又は補助開始の審判)が行われなければ後見等の効力は生じない
  • 見等開始の審判の申立てができるのは、本人・配偶者・四親等以内の親族等に限られている

判断能力が十分でない本人がミスから申立てをすることが難しい場合が多いです。また身寄りのない場合は、親族等からの申立ても期待できません。このような場合でも成年後見制度を利用できるように、本人の所在地の市区町村長が後見等開始の審判の申立てをすることができるようになっています。

市区町村長による後見等開始の審判に至るまでと、申立てから後見開始までの流れ

後見ニーズ(対象者)の発見

訪問介護員や介護支援専門員、社会福祉協議会職員、民生委員、家族・親族などからの報告、連絡、相談、要請により、情報が入る。

ケース検討会議の開催

市町村は、寄せられた情報の事実確認を行うとともに、地域包括支援センターや相談支援事業所、社協等と、日常生活自立支援事業の利用検討や成年後見等申立て(本人・親族・市区町村長による申立て)などの支援策について検討する。

本人調査

本人の心身・日常生活の状況・資産状況(わかる範囲)等を把握。

親族調査

2親等以内の親族(他の申立権者)を確認するため戸籍謄本、附票などを取り寄せる。親族がいる場合は、2親等以内の親族に申立ての意思を確認し、申立て意思がある、または既に4親等以内で申立てを行う予定の者が明らかな場合は、その者に申立てに関する支援を行う。※但し、2親等以内の親族がいるが「申立てを拒否している」「本人への虐待がある」又は「連絡がつかない」等の場合は、2親等以内の親族はいないものとして扱う。

成年後見登記事項の確認

成年後見等の登記の有無について確認する。登記ありの場合は、成年後見人等に対応を依頼

診断書の作成依頼、申立て類型の検討

診断書(家庭裁判所の指定様式)の作成を医師に依頼する。医師は精神科医が望ましいが、本人の状況をよく分かっているかかりつけ医でもよい。医師の作成した診断書等を参考に、申立ての類型(後見・保佐・補助)を検討する。

成年後見人等候補者の検討

特別な事情等がある場合は、その後の手続き等を円滑に行うため候補者を検討する

市町村長申立ての要否を検討・決定

市町村長申立ての要否について、検討会議(審査会)を開催して最終的に判断する。

申立て書類の作成等

申立てに必要な書類(申立書、本人の状況説明書、財産目録、親族関係図など)を作成する。

家庭裁判所への申立て

本人の住所を管轄する家庭裁判所へ申し立てる。申立費用(収入印紙、登記印紙、郵便切手及び鑑定費用)を予納する。緊急を要する場合には、審判前の保全処分の申立ても併せて行う。

審理

調査官による調査(本人、支援者、後見人候補者らも可能な限り同席)。医師による鑑定(必要な場合のみ

審判の確定

審判書が成年被後見人等に届いてから2週間以内に不服申立てがなされなければ、後見等開始審判の法的効力が確定する。家庭裁判所は、東京法務局に審判内容を登記するよう依頼。

後見等の開始

申立費用について本人負担の審判が出ている場合は、本人へ求償する(成年被後見人等宛てに納付書を送付)。本人負担の審判が出ていない場合は、成年後見制度利用促進支援事業の対象となる可能性が高いため、同制度の案内を行い、成年後見人等からの申込みに基づき助成手続きを行う。

手続きにかかる期間について、1~7の調査・検討・決定の過程に約2~3か月、8~9の申立準備に約1か月、10~12の家裁での審判に原則として約1~2か月、合計で原則として約4~6か月かかります。

申立費用と後見人等への報酬の助成

成年後見制度を利用する際に必要な経費として大きく分けて、以下の2つがあります。

  • 申立てに関する費用
  • 成年後見人等に対する報酬

これらの助成については、市区町村長による後見等開始の審判の申立ての場合に限らず、本人や親族が申し立てた場合であっても対象になりえます。ただし、自治体によって対応はまちまちであり、市区町村長による申立ての場合のみ対象としている自治体もあります。助成を受ける場合は、成年後見人等が市区町村の役所で申込みをします。

申立てに関する費用

申立てに関する費用については次の通りです。

項目費用
申立手数料 ※収入印紙後見/保佐/補助開始800円
保佐(補助)開始+代理権(または同意権)付与1,600円
保佐(補助)開始+代理権+同意権付与2,400円
登記手数料 ※収入印紙2,600円
家庭裁判所からの郵送費用 ※郵便切手数千円程度 ※家庭裁判所によって異なる
鑑定費用 ※家庭裁判所から求められた場合のみ10万円程度

成年後見人等に対する報酬

親族以外の第三者が成年後見人等に就任した場合、成年後見人等は1年に1回程度、家庭裁判所に報酬付与審判の申立てを行い、同裁判所がその報酬額を決定します。もっとも、被後見人(成年後見制度による保護を受ける人)の資力が乏しい場合、被後見人の財産から報酬を確保できない場合がありますので、その際に成年後見制度利用支援事業を利用します。なお、成年後見人等に対する報酬の助成金額は、厚生労働省が参考単価として示した金額を月額上限としている自治体が多いようです

居住種別報酬助成額(月額・上限)
施設入居者1万8千円
在宅者2万8千円

まとめ

以上、成年後見制度利用支援事業について説明しました。

成年後見制度利用支援事業について不明な点は、本人の住民票上の住所地の市区町村の役所に相談するとよいでしょう。


その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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