療育手帳の知っておきたいすべて

author:弁護士法人AURA(アウラ)
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知的障害者を支援し、専門的な療育・援護を提供するために発行される「療育手帳」。その名前は聞いたことがあるかもしれませんが、実際のところ、どのような制度なのでしょうか?このコラムでは、療育手帳についての全てを紐解いていきます。療育手帳の基本的な意味から対象者、取得のメリット、そして地域ごとの違いまで、詳細にご説明します。知的障害者支援に関心のある方、療育手帳の取得を考えている方、ぜひお読みください。

療育手帳とは?

「療育手帳」とは、知的障害を抱える方に発行される障害者手帳です。この手帳は、知的障害を有する方々が一貫した療育や援護を受けるために、様々な制度やサービスを利用しやすくすることを目的としています。都道府県や政令指定都市によって発行されており、統計によれば平成21年度末時点で約81.6万人がこの手帳を交付されています。

療育手帳の運用方法や判定基準は、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに基づいており、各地方自治体で異なる規定がされています。従って、自治体によって療育手帳の区分、判定基準、提供されるサービスなどが異なることがあります。

また、療育手帳の有効期限後には、再評価や更新手続きが必要です。再評価や更新のスケジュールも自治体によって異なります。具体的な情報は、お住まいの市区町村の福祉担当窓口にお問い合わせいただくことをお勧めします。

療育手帳と障害者手帳の違いってなんですか?

障害者手帳は「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」などの手帳の総称です。
身体障害者手帳は視覚障害や聴覚障害、肢体不自由などの身体上の障害を有する方に交付される手帳であり、精神障害者保健福祉手帳は総合失調症やうつ病、てんかん、発達障害など精神障害を有する方に提供される手帳です。

療育手帳の制度は自治体ごとに異なります

療育手帳の制度は、法律で規定されているわけではなく、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに基づいて都道府県や政令指定都市がそれぞれの要綱を策定して行っています。

つまり、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳のように法律によって規定されているわけではなく、各自治体が独自に制度を設計した結果、手帳そのものや提供されるサービスにおいて地域間で違いや差異が存在し、非常に複雑な制度となっています。

Q:「愛の手帳」「愛護手帳」なども療育手帳?なぜ名称が違うの?

これらはすべて「療育手帳」の一種です。
名称の違いは、療育手帳が法的に統一されているわけではなく、ガイドライン「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」に基づいて各自治体が発行しているためです。

たとえば、全国的には「療育手帳」と呼ばれますが、「愛の手帳」(東京都・横浜市)、「みどりの手帳」(埼玉県)、「愛護手帳」(青森県・名古屋市)など、自治体によって名称が異なる場合があります。発行される自治体によって取得方法や提供されるサービス、給付なども異なります。具体的な内容については、ご住所の自治体の福祉担当窓口にお問い合わせいただくことが必要です。

療育手帳の対象は?どのような場合に取得できるのか?

  • おおむね18歳未満で知的機能障害が認められ、その状態が持続している方。
  • 標準的な知的検査で測定された知能指数(IQ)が75以下。(一部の自治体では70以下を要件としている場合もあります)
  • 日常生活に支障があり、医療、福祉、教育、職業分野で特別な支援を必要とする方。

上記の基準に該当し、18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所にて知的障害が認定された方々に療育手帳が交付されます。

療育手帳の区分と判定基準は?

療育手帳の区分や判定基準は、各自治体が独自に設定しています。主に知能検査で測定された知能指数(IQ)や日常生活の状態を総合的に評価し、知的な障害の程度を判定しています。

障害の程度に応じて、重度を「A」、中軽度を「B」に区分し、それによって受けられるサービスの範囲が異なります。基本的にはこの二つの区分がありますが、自治体によってはもっと詳細な区分を設けている場合もあります。

こちらを参考にどうぞ

療育手帳の区分について(各自治体の一覧)|東京大学大学院経済学研究科 READ

程度区分は障害の重さ(重度~軽度)によって分類されます

療育手帳の程度区分は、基本的に知的障害の重さに基づいて設定されます。ただし、自治体や本人の年齢によっても異なることがあります。以下の基準を大まかな目安として用いて判定されますが、これは判定基準の一部であり、最終的な程度は総合的な判断に基づいて決定されます。

重度(A)・最重度
・重度
軽度(B)・中度
・軽度(B/B2/4度など)

年齢によって判定項目は異なります

療育手帳の取得基準や判定項目は、年齢によっても変わります。特に18歳未満の場合、年齢に応じて判定の基準が調整されます。それにより、同じ程度であっても年齢によって異なる結果となる可能性があります。

例えば、東京都の「愛の手帳」では、0~6歳未満、6~18歳未満、18歳以上といった年齢ごとに異なる判定基準が設けられており、個々の状況に適した判定が行われる仕組みです。

こちらを参考にどうぞ

Q:発達障害がある場合は「精神障害者保健福祉手帳」しか申請できないのでしょうか?療育手帳は取得できますか?

発達障害を伴う知的障害の場合、療育手帳の対象となることがあります。ただし、知的障害を伴わない発達障害の場合は一般的に「精神障害者保健福祉手帳」の対象となることが多いです。療育手帳の申請には医師による診断書は不要ですが、精神障害者保健福祉手帳の申請には医師の診断書が必要です。詳細はご自身の市町村にお問い合わせください。

療育手帳を取得するメリット

療育手帳の取得には、さまざまなメリットがあります。以下にその主なメリットをまとめてみました。

保育・教育面での援助

療育手帳を持つことで、保育園や特別支援学校への入園・入学の優先度が高まることがあります。お子さんの教育環境をより適切なものにするための支援が受けられます。

就労への支援

療育手帳の所持者は、就労に向けてさまざまな制度や支援を受けることができます。特定求職者雇用開発助成金や障害者トライアル奨励金、障害者雇用奨励金などが支給され、障害者向けの雇用制度の対象となります。

サービスや割引の利用

療育手帳を持つことで、交通機関や通信サービス、レジャー施設などでの割引が受けられる場合があります。経済的な負担を軽減できる上に、家族での外出や娯楽活動がより手軽になります。

税制上の優遇措置

所得税や住民税の減免や控除など、税制上の優遇措置を受けることができます。家計の負担を軽くし、生活の安定をサポートします。

医療面でのサポート

療育手帳を持つことで、医療機関での優先的な受診や診療報酬の軽減など、医療面でのサポートが得られる場合があります。

家族への支援

療育手帳を持つことで、本人以外の家族にも支援が及ぶことがあります。介護を必要とする家族がいる場合、その介護者への支援策が提供されることがあります。

まとめ

療育手帳は、知的障害者とその家族にとって貴重な道標となる存在です。このコラムを通じて、療育手帳の取得基準や区分、対象となるメリット、そして各自治体の制度の違いについて理解を深めていただけたことを願っています。療育手帳は、知的障害者の未来をより明るくするための一助となります。


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