目次
法定相続登記
法定相続の登記申請は,共同相続人のうち1人だけでもできます。
※法定相続の登記は,相続人全員が法定相続割合に応じた不動産の共有持分を得ることになり(マナスになる人はいない。)。全員がプラスになるという意味で共有物の保存行為に分類されるからです。
詳細は,共有物の保存行為
共同相続人の1人の持分だけを移転させる法定相続登記は,共同相続人の1人で申請することはできません。
実際には,法定相続登記をした後,遺産分割協議や審判が行なわれるため,登記した不動産について,最終的に法定相続分とは違う承継がなされることもあります。この段階で,現実の権利の状態と相続登記の状態が一致しなくなることによる問題が生じることがあります。
詳細は,相続に関する権利変動
遺言による単独相続の場合の登記申請
〈設例〉
遺言:「遺産中の甲不動産をAに相続させる。」
被相続人が死亡した。
〈結論〉
Aによる単独の登記申請ができます。
印鑑証明書を添付したり,他の相続人が共同申請人となる必要はありません。
自筆証書遺言については,「検認調書」が必要ですが,公正証書遺言の場合は不要です。3 特定遺贈×登記申請
特定遺贈の場合の登記申請
〈設例〉
遺言:「遺産中の甲不動産をA(相続人以外の者)に相続させる。」
被相続人が死亡した。
〈結論〉
共同申請によらなければなりません。
登記手続上はAは相続したわけではないので,登記の方式は原則どおりとなるからです。
相続扱いされないため,仮に遺言書を添付する場合でも「検認調書」の添付は不要です。
登記申請の立場 | 該当する者 |
登記義務者 | 法定相続人 |
登記権利者 | 受遺者 |
遺産分割による単独承継の場合の登記申請
遺産分割によって遺産中の不動産を単独承継した人の登記申請の方式をまとめます。
① 単独申請
遺産分割により不動産甲を相続人Aが単独で承継した場合,Aは単独で不動産甲の相続登記を申請できます。
〈添付書類〉
・戸籍事項証明書
・遺産分割協議書・審判書など
・他の相続人全員の印鑑登録証明書
② 証書真否確認訴訟
例えば,遺産分割協議が成立したにもかかわらず,相続人の一部が印鑑登録証明書を交付しない場合,遺産分割協議書の「証書真否確認の訴え」の判決で代用することができます。
※この訴訟は『書面が正しいものである』ことを確認する手続で,一般的な訴訟とは違い簡易的です。
印鑑証明書×代用|移転登記請求訴訟
※※印鑑登録証明書がもらえない場合の訴訟
相続人同士の移転登記請求訴訟の判決は,「給付判決」に分類され,他の相続人(被告)に対する登記申請意思の擬制となります。しかし,相続登記において他の相続人は登記申請者ではないので,判決によって代用される関係にはありません。
③ 2段階プロセス
2段階の登記を行う方法があります。
〈1段階目〉(法定相続登記)
まず,相続人のうち1人が法定相続登記を単独で申請します。
〈2段階目〉(遺産分割・移転登記)
次に,遺産分割による移転登記手続をします。
この場合,法定相続人と受遺者との共同申請となるため,他の相続人の印鑑登録証明書が必要となり,他の相続人の協力が必要です。他の相続人が協力してくれない場合の解決方法をまとめます。
④2段階方式+給付訴訟
2段階目の移転登記について,法定相続人の協力が得られない場合,移転登記請求訴訟を提起し,給付判決(判決主文:「・・・移転登記手続をせよ。」を得る方法があります。
この方法は煩雑で,手続のコストが余分にかかるというデメリットがあります。
本来,遡及的な権利移転なので,ダブルで課税されないはずですが,税務署は,民事の解釈とは別の解釈(納税者に不利な主張)をすることがあるのです。
その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。