株式の準共有

author:弁護士法人AURA(アウラ)
男性

株式の準共有によるトラブル

例えば,相続財産にA会社の株式120株があり,相続人3人が均等の相続分を持っている場合,各相続人が40株ずつ承継するのではなく,120株を3人が準共有している状態になります。

株式は法律の原則論では相続により「準共有」となるのです。

株式は自益権・共益権を含むので,単純な財産・金銭と同等とは言えないからです。

株式が準共有となった場合にはトラブルが生じやすいです。
最初に株式が相続により準共有となった場合のトラブルは,遺産分割協議が成立するまでの間は解消しません。

内部問題外部問題
問題株主間の相続問題経営権(議決権)行使の問題
具体例遺産分割総会決議不存在確認訴訟

遺言で承継者が指定してあれば遺産共有を避けられますが,遺言がない場合はどうなるでしょうか。

準共有の株式の権利行使者の指定・議決権行使

準共有の株式の株主(株式の準共有者)は,株主総会で議決権行使をするためには,そのうち1名を権利行使者として指定し,決定した権利行使者を会社に通知します。

準共有の株式の権利行使者を指定することは,共有物の管理方法として,準共有持分の過半数で決めます。誰も(どのグループも)過半数に達しないと,権利行使ができない状態(デッドロック)になります。

準共有の株式の権利行使者は多数決で決めるのですが,この多数決のために協議(又は参加し得る機会を与えること)が必要かどうかについての見解が分かれています。

協議は不要という見解をとりつつ,個別的事情によって指定された株主による議決権行使を権利の濫用として認めなかったという裁判例もあります。

多数決によって権利行使者の指定をした後に,指定された者が議決権を行使する場合でも,権利行使者は,自由に議決権を行使できるわけではありません。議決権行使についても準共有者の間で決める必要があります。この決定は,原則として管理行為ですが,決議の内容のが重要(株式の処分・内容の変更など)であるなど特段の事情がある場合には,変更行為として,共有者全員の同意が必要となります。

会社からの準共有株式の権利行使の承認

準共有の株式の権利行使者の指定がない場合には,原則としては,権利行使ができないことになりますが,会社側から準共有者のうち特定の者による権利行使を認めることができます(会社法106条ただし書)。以前は平成11年判例で否定されていましたが,法改正により可能となりました。

ただし,議決権行使が民法の共有の規定に従っていない場合,会社は議決権行使を承認できず,承認したとしても議決権行使は適法になることはありません。

会社側から株式の準共有者による権利行使を承認することはできますが,例えば,遺産分割協議中であるなど,会社の支配関係に不当な影響を及ぼすおそれがある場合には,例外的に会社側からの権利行使の承認はできません。

権利行使者による内部拘束違反の権利行使

準共有者の株式の権利行使を,準共有者の間で指定した権利行使者が行う場合,準共有者の間で,議決権の行使内容も決めることになるでしょう。この場合に,権利行使者が,決めた内容に反して議決権を行使した場合であっても,会社に対する議決権の行使自体の効力は否定されません。

ただし,株式の準共有者の間で,状況によっては債務不履行による損害賠償責任が生じるこ

株主としての原告適格

準共有の株式について株主として,総会決議不存在確認の訴えや合併無効確認の訴えを提起する場合,誰が提訴できるのでしょうか。

権利行使者として指定されていない準共有者については,単独では原告適格を欠くので,提訴できませんが,権利行使者指定未了の準共有株式の議決権割合が非常に大きい場合(全部又は過半数)など「特段の事情」がある場合には,準共有者単独でも原告適格を認めるのが判例です。

株式の共有物分割による単位未満株式発生

株式の準共有は解消することが望ましいです。そこで共有物分割(請求)によって単独所有に変えることが行われます。具体的な分割の方法として,株数を準共有者の数で分けて,それぞれ単独所有(単独の株主)とする方法(現物分割)があります。

しかし,単位株制度がとられている場合は,単位未満株式を生じさせる現物分割はできません。


その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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