【成年後見制度】成年後見人の報酬について:支える役割と対価のバランス

author:佐々木彩乃
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成年後見人の報酬について、多くの方が疑問を抱いていることでしょう。成年後見人は、判断能力がない人の財産を管理したり身上を保護したりする重要な役割を担いますが、その対価については一般的によく知られていないことがあります。本コラムでは、成年後見人の報酬に関する基本的な情報から、付加報酬の考え方、さらに市町村が肩代わりしてくれる報酬助成制度についても取り上げてみましょう。

成年後見人ってどんな人なのか

成年後見人は、主に経済的な判断能力がない成年者を支援する役割を持ちます。具体的には、その人の財産を管理したり、身上を保護したりする責任があります。

成年後見人には、判断能力のない成年者の親族(子どもや兄弟姉妹など)がなることもありますが、国家資格を持つ専門家である弁護士・司法書士・社会福祉士などが、家庭裁判所から選任されることもあります。

スーツをきた男の人が解説をしている様子のナイコン
主な専門職
弁護士
司法書士
社会福祉士 など

成年後見人の主な職務

成年後見人の主な職務は次の2つです。

財産管理

  • 預貯金の管理
  • 確定申告や税金の支払い手続き
  • 生活費の管理と支給 ※ただし、財産を運用して増やすことは求められていません。

身上監護

  • 介護や障害福祉サービスの申請手続き
  • 施設や病院との契約や料金の支払い

成年後見人は、被後見人の利益を第一に考えながら、責任を果たすことが重要です。財産管理や身上監護によって、被後見人の生活をサポートし、安心して暮らせるように努めます。

成年後見人の報酬とは

成年後見人の報酬は、基本報酬と付加報酬の2つの種類があります。

基本報酬

基本報酬は、通常の成年後見人の職務に対する対価です。つまり、日常的な財産管理や手続きなどの業務に対して支払われる報酬です。

付加報酬

付加報酬は、特別な難しい事情があったり、通常の業務範囲を超えて特別な業務を行った場合に支払われる報酬です。例えば、特別な訴訟手続きや身上監護のような特別な任務に対して支払われることがあります。

基本報酬額は、成年後見人や被後見人が自由に決めることはできず、家庭裁判所が決定します。家庭裁判所は報酬の目安として、公表されている「成年後見人等の報酬の目安」というガイドラインを参考にします。

成年後見人の基本報酬は、現金、預貯金、有価証券(株式、投資信託、国債など)などの流動資産(簡単に現金化できる資産)の合計金額に応じて、3つの段階に分かれています。詳細な金額や条件については、家庭裁判所の指針を元に決定されます。

成年後見人の報酬目安
流動資産月額年額
1000万以下2万円24万円
1000万超から5000万以下3〜4万円36〜48万円
5000万超5〜6万円60〜72万円

成年後見人の報酬についての目安はあくまでも一般的な指針であり、実際の報酬は個々の状況によって異なります。報酬は被後見人の財産状況や業務の複雑さ、地域による差異などを考慮して個別に決定されることが一般的です。

流動資産が1000万円以下の場合、基本報酬が目安として示された金額よりも低くなることもあります。また、付加報酬が特別な事情がなければ発生しない場合もあります。

付加報酬額の目安

注意:以下の金額は一般的な情報であり、地域やケースによって異なります。具体的な金額は家庭裁判所の指針や専門家の相談が必要です。

内容金額の目安
裁判手続きや法的手続きの対応おおよそ5万円~10万円程度
身上監護や介護に特別な負担がある場合おおよそ5万円~10万円程度
特別な資産管理が必要な場合(不動産や事業経営など)おおよそ5万円~20万円程度
後見人との関係が複雑で対応が難しい場合おおよそ5万円~10万円程度

上記の目安は、成年後見人が通常の職務を超える特別な業務に対して受け取る付加報酬の一般的な範囲を示しています。しかし、これらの金額はあくまで目安であり、具体的なケースによって変わります。付加報酬の具体的な金額は家庭裁判所の指針や専門家との相談が重要です。

成年後見制度利用支援事業とは

成年後見人の報酬は、付加報酬がすべてのケースで発生するわけではなく、基本報酬はご本人が亡くなるまでに発生することが一般的です。その最低額は月額2万円(年額24万円)とされています。

この報酬金額が高いかどうか、相応かどうかは人それぞれの意見があるでしょう。ただし、成年後見人のなり手が十分に確保できているとは言い切れないため、月額2万円より低く報酬が設定されることは考えにくいとされています。

成年後見人の報酬が高くて利用できない、または報酬を支払うのが負担になると感じる方もいるかもしれませんね。そういった場合には、市町村が成年後見人の報酬を一部肩代わりしてくれる報酬助成制度があります。これにより、成年後見制度をより利用しやすくなることが期待されています。

まとめ

成年後見人の報酬は、被後見人の利益を最優先に考える上で重要な要素です。基本報酬は通常の業務に対する対価であり、付加報酬は特別な事情や難しい業務に対して支払われる場合があります。ただし、これらの金額は一律ではなく、個々のケースによって異なることを理解しておくことが大切です。市町村の報酬助成制度により、成年後見人制度がより利用しやすくなる可能性もあります。成年後見人の報酬についての理解を深めることで、制度が適切に機能し、被後見人の生活がサポートされることを願っています。

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