自筆証書遺言の『氏名』

author:弁護士法人AURA(アウラ)
男性

自筆証書遺言における『氏名』

自筆証書遺言では厳格な方式が決められています。

方式のうち1つが『氏名の自書』です。実際に,氏名の自書が認められるかどうかで見解が対立するケースは多いです。
まずは『氏名』に関する規定と基本的な解釈をまとめます。

<自筆証書遺言における『氏名』>

あ 規定

自筆証書遺言の記載について
→『氏名』を自書することが要件となっている
※民法968条1項

い 解釈論

一般的には本名・フルネームを記載する
一方,正式な氏名以外を記載するケースもある
→必ず無効になるわけではない
解釈により有効となることもある

通称・雅号・ペンネームと『氏名』該当性

遺言に雅号やペンネームを記載するという発想もあります。この場合に『氏名』に該当するかどうか画一的に判断できません。遺言者を特定できるかどうかで判断されます。

<通称・雅号・ペンネームと『氏名』該当性>

あ 事案

自筆証書遺言における『氏名』として
次のような『正式な本名以外の呼称』を記載した
ア 通称イ 雅号ウ ペンネーム

い 判断の傾向

次のような傾向がある
遺言者が特定できる場合→有効
遺言者を特定できない場合→無効

通称の記載の有効性判断事例

実際に通称として使用していた名を遺言書に記載した事例があります。
通称として使用していたことが認定され,その結果,遺言は有効と判断されました。

<通称の記載の有効性判断事例>

あ 遺言書の記載

自筆証書遺言の氏名として
『根来政雄』と記載されていた
本名は『根来正雄』である

い 通称使用

生前,遺言者は『政雄』を用いたこともあった

う 裁判所の判断

氏名の自書として有効である
※大阪高裁昭和60年12月11日

氏・名の片方のみと『氏名』該当性

遺言には苗字・名前の両方が記載されていることが望ましいです。この一方のみという場合の判断の傾向をまとめます。

<氏・名の片方のみと『氏名』該当性>

あ 事案

自筆証書遺言の『氏名』として
次のいずれか一方のみを記載した
ア 苗字(ファミリーネーム)イ 名前(ファーストネーム)

い 判断の傾向

次のような傾向がある
遺言者が特定できる場合→有効
遺言者を特定できない場合→無効

遺言作成の際の『氏名』の注意点(概要)

以上は,遺言の『氏名』の記載と有効性の判断についての説明でした。この点,遺言を作成する際には,後から判断が分かれるようなことは避けることが望ましいです。

<遺言作成の際の『氏名』の注意点(概要)>

あ 不完全による紛争発生

遺言の『氏名』が確実なものでない場合
→以上のような『氏名』の解釈の紛争につながる
例;『氏名』を欠くため無効であるという主張で裁判となる

い 遺言作成の際の注意(概要)

遺言作成の際は確実・万全に方式に適合させることが好ましい

男性と女性

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