遺族年金の受給権者=配偶者
公的な年金制度として遺族年金があります。
法律婚と内縁の違いが表面化する場面でもあります。
〈遺族年金の種類〉
種類 | 制度 |
遺族基礎年金 | 国民年金に含まれる制度 |
遺族厚生年金 | 厚生年金に含まれる制度 |
〈受給権者〉
代表的な受給権者は配偶者ですが,内縁者を含みます。婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます。
このように事実婚=内縁を法律婚と同等に扱うことが原則となっています。
しかし,特殊な事情があると両者の違いが現れることがあります。
詳細は,相続と遺族年金
重婚的内縁関係と遺族年金
正妻と内縁の妻の両方が存在する場合(重婚的内縁),判例の見解は統一されておらず,揺れています。
〈正妻との関係形骸化を条件とする見解〉
戸籍上の配偶者との別居期間が長く,かつ,戸籍上の配偶者に対する経済的支援をしていない場合,内縁者への支給が認められるとします。
※戸籍上の妻との別居期間が約17年で,経済的支援はなく,内縁の妻との同居期間は約16年である場合,内妻への支給を認めた裁判例があります。
他方,戸籍上の妻との間で離婚についての具体的な合意はなく,別居後も経済的に妻を支援しており,夫からの離婚請求が認容される余地はなかった場合,内縁の妻への支給を認めなかった裁判例もあります。
戸籍上の妻との別居期間が約36年で,生活費の送金は継続していた場合,内妻に対する支給を認めなかった(=正妻への支給を認めた)裁判例があります。
〈正妻との関係と内縁者への支給をリンクさせない見解〉
戸籍上の配偶者に対する遺族年金の支給と内縁者に対するそれは,独立して判断すべきであるとします。
内縁→養子縁組
〈事案〉
AとBが内縁関係にあった。
AとBが養子縁組をした。
Aが亡くなった。
Bは遺族年金の給付を申請した。
〈裁判所の判断〉
養親と養子は婚姻ができないので,婚姻関係と同様の事情に該当しない。
→遺族年金の支給を認めない
遺族年金の支給対象
遺族年金は文字どおり「遺族」に支給される制度で,以前は母子家庭のみが支給対象でしたが,その後の法改正により,平成26年4月から,父子家庭となった場合も支給対象に追加されました。
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