医療費・出産費用の分担義務
夫婦間では,日々の生活費を分担する義務があります。
これは,内縁関係(事実婚・事実上の夫婦)にも適用されます。
詳細は,内縁関係に適用される制度と適用されない制度
婚姻費用分担義務は,日常的な生活費だけではなく,病気や怪我による医療費などの臨時の出費も対象に含みます。
出産費用
妊娠や出産に関する費用も同様に夫婦での分担義務があります。
出産そのものや出産後に要する費用が含まれます。
・助産料
・子供の沐浴料
・分娩費(診察費などを含む)
・乳児の医療費
・乳児の衣類の費用
・栄養薬代(乳児の牛乳・母の薬の費用)
医療費
〈典型例〉
医療費のうち病気や怪我による治療費,入院手術費,通院交通費,必要な介護費,療養費
は,婚姻費用に含まれます。夫婦で分担すべきものです。
〈夫婦での分担義務の有無が分かれる医療費〉
婚姻費用として夫婦で分担する義務があるかどうかが一律に判断できない医療費もあります。
施術を受けなくても生命身体に影響がないもの(美容整形や歯科矯正(審美歯科))については,医療機関への支払い(費用)は婚姻費用に該当するとは限りません。
施術を受けることについて,事前に夫婦間で合意や承諾があったかどうかで判断します。
事前の承諾・同意の有無 | 婚姻費用の扱い |
夫婦間の承諾あり | 婚姻費用分担義務あり |
承諾なし(独断) | 婚姻費用分担義務なし |
内縁関係への準用
〈医療費〉
婚姻費用分担義務は一般的に,内縁関係にも準用(適用)されます。
ただし,内縁関係が破棄(解消)されるまでの出費が対象となります。別居までではなく内縁解消までです。
内縁解消前(別居中)に生じた医療費については,婚姻から生じる費用に準じるので,内縁の相手方は負担する義務があります。
〈内縁解消後の出産費用〉
法律婚の離婚と異なり,内縁の解消は,一方的に実現することが認められるので,どの時点までの費用を分担するのかが問題となります。
内縁の2人の間の子供を妊娠したケースでは,内縁解消後の出産であっても,出産に関連する出費の全体について分担義務が認められます。
※裁判例
内縁関係が継続(同居)している時期に,内縁の妻が妊娠(懐胎)した。
内縁関係は解消された(別居するに至った)。
内縁の妻が子を出産した。
内縁の妻は出産前後にいろいろな出費をした。
→出産に関する費用は婚姻費用に準じるので,(事実上の)夫婦の各能力に応じて分担する義務がある。出産が内縁関係解消後であっても,内縁の妻の負担は,出産自体or出産と相当員が関係を有する費用であり,かつ,内縁関係の結果として発生した費用だからです。
その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。