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離婚後の財産分与
離婚時には財産分与請求ができます。
それでは,AとBは夫婦が離婚した後,Aが死亡した場合で,夫婦で築いた財産の大部分がA名義となっていたとき,A名義の財産は,Aの相続人に相続(承継)されるのでしょうか,それともBは財産分与を請求することができるのでしょうか。
相続時における財産分与義務
一般論としては,Aが死亡した時点で,Bに財産分与請求権(Aの財産分与義務)があったかどうかで結論が異なります。
〈相続時に財産分与義務あり〉
Aの相続人が財産分与義務を承継するので,Bは財産分与を受けられます。
〈相続時に財産分与義務なし〉
Aの相続人には承継する財産分与義務がないので,Bは財産分与を受けられません。
財産分与請求権(財産分与義務)の発生時期
〈確認説〉(近年の高裁判決)
離婚成立により当然に権利が発生する。
財産分与の合意・審判は権利の確認にすぎない。
財産分与義務者の死亡により無条件に相続される。
〈形成説〉
財産分与の合意・審判成立の時点で請求権が発生する(請求権が形成される)。
分与する財産の数額・内容・分与の方法の特定が必要だから。
協議or審判成立後の死亡であれば相続される。
〈折衷説〉
時点 | 結論 |
離婚の成立 | 基本的・抽象的な請求権が発生 |
調停・審判の申立or財産分与の意思表示 | 現実的・具体的な権利が生じる |
審判等の申立or意思表示の後の死亡であれば相続される。
内縁解消後の財産分与
① 財産分与の類推適用
内縁解消についても,財産分与規定の類推適用が認められています。
内縁関係の2人で築いた財産があれば,どちらの名義であっても2人で公平に分ける必要があります。
重婚関係にあったケースにおいてですら,財産分与規定の類推適用が認められます。
② 家事調停
内縁解消時の財産分与については,離婚時の財産分与の調停・審判と同様,家事調停が利用できます。内縁解消の手続についても法律婚と同様に扱うのです。
③ 死別による内縁解消と財産分与
〈事例〉
AとBが内縁関係にった。
Aが死亡した。
2人で築いた財産の大部分はA名義となっていた。
A名義の財産は,Aの相続人に相続(承継)されるのでしょうか,Bが「財産分与」として取得することがきるのでしょうか。
〈結論〉
Aの相続人に承継されます。
内縁関係は原則として婚姻と同様に扱いますが,さすがに相続(死別)については適用,類推適用などはできないとされています。内縁者は,原則として財産を承継することができないということです。
詳細は,内縁関係に適用される制度と適用されない制度
内縁解消と慰謝料・養育費
詳細は,内縁関係の清算
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