目次
検認
検認の対象となる遺言
公正証書以外の遺言(自筆証書遺言及び秘密証書遺言)は,公的システムによる保管方法がありませせん。例えば,被相続人(故人)が亡くなった後に,遺言が発見されるということはよくあります。近親者が遺言を保管していたという場合もあります。
そこで裁判所で遺言を開封して確かめる手続があります。
検認義務を負う者
① 遺言の保管者
② 遺言を発見した相続人
管轄裁判所
検認手続を申し立てる裁判所は,遺言者の最後の住所地又は相続開始地の家庭裁判所です。
※ 確認
「検認」と似ている手続として,一般危急時遺言と船舶遭難者遺言についての「確認」の申立があります。
遺言が「遺言者の真意」であるかどうかを家庭裁判所で判断します。
確認は,「遺言作成日」から20日以内に家庭裁判所に申立をしなければなりません。
確認の申立人は,証人の1人又は利害関係人です。
検認義務違反のペナルティ
封印された遺言を発見した方が,検認する前に開封してしまうということがあります。意図的であることも,単にルールを知らなかったということもあります。また,開封して遺言内容を見て,自分に不利と分かると,なかったことにしてしまいたくもなるでしょう。
このような違反については,民法上ペナルティが規定されています。
① 違反して遺言執行・開封
※封筒の綴じた部分に押印(封印)があるものが対象で,糊付けして綴じてあるだけで押印していないものは対象外
過料5万円以下
② 故意に遺言を隠匿,破棄
検認手続の流れ
遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます。
→家庭裁判所は,相続人全員に,「遺言書検認の期日」を通知(送付)します。
この通知を受けた相続人が検認期日に立ち会うかどうかは自由です。
この通知が届いても,相続する財産があるとは限りません。
→検認期日に,相続人が立ち会っている中で,裁判官が開封や内容確認など手続を行います。
その結果は,「検認調書」として記録されます。
→家庭裁判所は,遺言書の末尾に検認済と記載して押印(検認済証明)をします。
押印済の遺言書原本は申立人に返還します。
→家庭裁判所は,検認に立ち会わなかった相続人(申立人,受遺者)に「検認済通知書」を送付します。
検認手続の目的・確認事項
検認手続で検査されるのは,外形・形式的なものです。
裁判所が,遺言の内容自体の審査・判断を行うわけではなく,遺言の有効性を審査するわけではありません。ただし,実務上は,検認手続が有効性判断に大きく影響します。
① 検認の目的
・遺言書の偽造・変造を防止する
・遺言の存在を相続人などの関係者に知らせる
② 検認事項
・遺言(書面)の形状
・加除訂正の状態
・日付・署名など遺言の内容
③ 検認対象ではない事項
・遺言者が真意であったかどうか
・遺言が所定の形式に違反しているかどうか
検認と遺言の有効性との関係
① 検認をせずに相続人の1人が開封して保管していた
偽造した疑いが生じる
② 相続人全員で開封したが,一部の者はじっくりと見る時間がなかった
開封後に変造したという疑いが生じる
③ 検認したが,相続開始(死亡)から長期間経過後であった
偽造した疑いが生じる
もともと検認の目的は遺言の偽造・変造を防ぐというものです。
これは,裏返すと『偽造・変造という疑いを持たれない』『偽造・変造という主張をされることを回避する』ということになります。
いずれにしても,偽造・変造はストレートに遺言を無効とする事由です。
結局,検認手続は遺言の有効性判断に影響しているということになります。
検認済証明(証書)が必要な場面
① 被相続人名義の預貯金を相続人・受遺者が払い戻すとき
② 被相続人名義の不動産について所有権移転登記手続を行うときこれらの場面では,一般的に,検認済証明と遺言書の提示が必要にされています。
自筆証書遺言を作る場合,「検認」に配慮しておくと良い
① 封筒に「検認必要」というコメントを書くと良い
遺言者の死後,相続人が知らずに開封してしまうという実例が多く,過料などのペナルティや偽造と主張されるリスクが生じます。
そこで,封筒自体に注意を記載しておくと良いのです。
〈封筒への注意事項記載例〉
「開封しないで家庭裁判所に検認を申し立てること」
② 公正証明書遺言を活用すると万全
公正証書遺言だけは検認手続が不要です(封印しないことが前提です)。
検認義務違反のペナルティなどが相続人に適用されることも避けられます。
例えば,不動産を承継した相続人の1人が単独で登記を行うことが可能となります。
検認が不要なので,他の相続人に知られないまま登記の移転を完了できます。
預貯金の払戻についても同様です。
公正証書の原本は公証役場で保管されているので,偽造・変造の疑いも生じません。
その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。