目次
遺言の方式と種類
① 普通方式(実際によく用いられる)
・公正証書遺言
・自筆証書遺言
・秘密証書遺言
② 特別方式
・危急時遺言:一般危急時遺言(民法976条)
難船危急時遺言(民法979条)
・隔絶地遺言:伝染病隔離者遺言(民法977条)
在船者遺言(民法978条)
公正証書遺言
① 作成方式
遺言の方式のうち「しっかりしたもの」が公正証書遺言です。
遺言者の意向を公証人が筆記します。
証人2人が立ち会わなければなりません。証人となるには一定の条件があり,「証人欠格・不適格」に該当しないことが必要です。
遺言は公証役場(公証センター)で保管されます。
② 長所と短所
〈長所〉
・無効になりにくい。
・遺言書の紛失がない。
・遺言の中でも「公正証書遺言」は公証役場に原本が保管されることから偽造の可能性が低いと され,「検認」を行う必要はありません。
〈短所〉
・手続きが面倒
・一定の費用がかかる
・公証人と証人には内容を秘密にできない
③ 特徴
公正証書遺言の大きな特徴は,遺言を公証人が作成し,公証役場で保管してくれることです。そのため,紛失してしまったり,勝手に書き変えられる(偽造)恐れがありません。
遺言者の意思確認を公証人というプロが行うため,後から無効となるリスクを大きく低減できます。ただし,絶対に無効とはならないというわけでもありません。
④ 検索システム
公正証書遺言については,その存在の有無を照会する検索システムがあります。
自筆証書遺言
① 方式
遺言者自身が紙に書き記すという簡単な方法で作成できます。
日付・氏名及び全文を自書し,押印します。
自書や押印が本物かどうかが問題になることがあります。
② 長所と短所
〈長所〉
・作るのが簡単で費用がかからない
・公証人や証人,立会人など,本人以外の関与は一切不要
〈短所〉
・専門知識がないと,足りないところができてしまう。
・足りないところがあると,遺言が無効となるおそれがある。
・家庭裁判所での「検認」手続が必要
・遺言が効力を持つのは,書いた方(遺言者)が亡くなった後です。
・「本人が書いたものではない」という主張・疑いが生じる。
③ 検認
自筆証書遺言は,家庭裁判所での「検認」が必要です。ただし,「自筆証書遺言書保管制度を利用していた自筆証書遺言」も,法務局に原本が保管されることから検認を行う必要はありません。
④ 平成30年改正民法
2019年1月13日以降に作成した場合,財産目録はパソコン等で作成したものや預金通帳の写し等を添付することが可能ですが,自書によらない部分があるすべてのページに遺言者の署名・捺印が必要です。
秘密証書遺言
遺言者が誰にも遺言内容を教えたくない=秘密にしたいという場合に活用できます。
遺言内容を秘密にするため,内容チェックがされていないということになります。
内容の適法性・有効性についてはチェックされていないのです。
そこで,後から『無効』と判断されるリスクは排除されないままです。
① 作成方式
・遺言者が証書を作成・封印する。
・公証人と証人(欠格事由あり)2人が封印する。
② 長所と短所
〈長所〉
・勝手に変えられる心配がない
・公証人や証人にも内容を秘密にすることができる
〈短所〉
・手続きが面倒
・一定の費用がかかる
・自分で作るので足りない部分ができてしまうおそれがある
③ 家庭裁判所での「検認」手続が必要
※遺言書は勝手に開けてはいけない
自筆証書遺言,秘密証書遺言は,家庭裁判所での「検認」が必要です。しかし,「検認」をせずに開封してしまうケースがあります。その場合でも,遺言の無効事由がない限り,遺言が無効になるわけではありませんが,5万円以下の過料の対象となるばかりか,利害関係者から「その遺言書は偽造・無効」という主張をされることになりかねません。
もし遺言書を発見した人が「自分に不利な内容だったらどうしよう」と,1人で勝手に封を開けてしまったらどうなるでしょうか。ほかの相続人は封のとかれた遺言書を見て、開けた人が書き替えたんじゃないかと疑うかもしれません。
そのようなことが起こらないように、遺言書には「これは正規のもので、誰の手も加えられていません」という確認が必要なのです。この確認を「遺言書の検認」といいます。
具体的には、遺言書を発見したら開封せずに家庭裁判所にもっていき,家庭裁判所で「検認済証明書」をもらいます。
その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。