祭祀供養物の承継

author:弁護士法人AURA(アウラ)
老夫婦

墓守・遺骨引取

故人に絡んでトラブルとなるのは相続=財産承継だけではありません。
親族間で,墓所の管理を誰が行うのか,遺骨を誰が引き取るのか,葬儀は誰が行うのかなどの対立が生じることがあります。

葬儀

葬儀の方法・内容についても,親族間で希望するやり方についての対立が生じることもあります。
これは葬儀を主宰する者=喪主が決定しますが,喪主を誰が行うかについて対立が生じる場合もあります。
最終的には家裁が指定します。

詳細は,葬儀費用の負担者

祭祀供養物

① 典型例

〈系譜〉

祖先からの血縁関係や系統関係を示した文書

〈祭具〉

祖先の祭祀・礼拝のために用いられるもの
例:仏像,位牌,霊位,仏壇,十字架

〈墳墓〉

・遺体を埋葬,遺骨(焼骨)を埋蔵するための設備

 例:墓石・墓標,埋棺,霊屋・埋葬・埋蔵された遺体・遺骨

※遺体・遺骨の所有権

遺骨(焼骨)は,墓地への埋蔵,供養のためにのみ必要となるため,祭祀主宰者に承継されます。

遺体は,遺骨と同様に扱う方向性にありますが,臓器移植法による臓器移植の対象となる死体の場合には,家族に管理権があります。

② 墓地の土地所有権

〈墳墓〉

墳墓が所在する土地を親族で所有していた場合,親族間での所有関係は曖昧で,共有状態のようなものです。

この場合,墳墓と一体の物と言える程度に密接不可分である範囲は,祭祀供養物に含まれ,祭祀主宰者が承継します。
〈寺院所有の墓地〉

墳墓が所在する土地を墓地経営者が管理している場合,一般的には墓地の経営者が墓地の所有者です。
例:宗教法人(寺院)・公益法人・地方公共団体

③ 墓地使用権

墓園・寺院の墓地使用権は,祭祀供養物に含まれます。

※ 登記

墓地・土地の所有権が移転する場合,所有権移転登記を要します。

登記原因民法897条による承継
登記義務者遺言執行者or相続人全員
登記権利者祭祀承継者

④ 祭祀供養物は,個人の礼拝・信仰の対象であるため,差押えが禁止されています。

承継者(祭祀主宰者)

① 祭祀主宰者の指定

「祭祀主宰者」として指定された者が祭祀供用物を承継します。

祭祀主宰者が,葬儀の方法を決めることができます。通常は祭祀主宰者と喪主は一致します
が,祭祀主宰者以外の者が葬儀を行う場合もあります。

詳細は,祭祀主宰者の指定

② 祭祀主宰者指定(審判)の効果

祭祀供養物の所有権を承継します。

所有権移転以外の法律上の効果はなく,葬儀を主宰・実行する義務はありません。

説明解説する人

税務(みなし相続財産)

① 税務上は「墓所や祭具」が相続税の課税対象外となっているため,このルールを利用した節税策も考案されています。


民法上は相続財産ではなくても,税法上相続財産とみなされ,相続税が課税される場合があります。そのような財産については税務上の控除や非課税扱いもあります。

② 生命保険金・死亡退職金の税務上の扱い(みなし相続財産)

税務上,相続財産とみなされるものの代表は生命(死亡)保険金や死亡退職金です。これらは,被相続人が所有していた財産ではないので相続財産そのものではありませんが,経済的利益が被相続人から相続人に移転したとみることができるので,税法上「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。

実質的対価性
死亡保険金被相続人が保険料を負担していた
死亡退職金被相続人が勤務していた

生命保険金は「みなし相続財産」となりますが,非課税枠が与えられているため,節税策として活用されています。以前の税制改正の議論の中で非課税枠を縮小するという意見もありましたが,結局見送られています。

生命保険金の非課税限度額=500万円 × 法定相続人の数

③ 死亡退職金の非課税限度額

被相続人が生前勤務していた勤務先から相続人が受け取った死亡退職金も「みなし相続財産」として,相続税の課税対象となるのですが,生命保険金と同じ非課税枠が与えられています。

会社が契約者となる生命保険契約

会社が役員個人の生命保険に加入するケースはよくあります。会社を契約者,役員個人を被保険者として,会社が保険料を負担するのです。

税効果をはじめとしていろいろなメリットがあります。

・法人の節税

保険料の4分の1~2分の1の損金算入ができます。
・法人への転嫁

個人の保険料負担を会社に転嫁できます。
・事業資金としての使途

死亡保険金を死亡退職金の支払原資とするのではなく,事業資金として使うこともできます。
・満期到来の際の対応

役員が健在のまま満期を迎えた場合,(通常の)退職金原資として使えます。

墓地・礼拝施設の非課税扱い

① 墓地・礼拝施設の非課税扱い

墓地や礼拝施設などの宗教に関する財産は,相続税が課税されないことになっています。あ墓所,霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるものは,相続税の課税対象にはなりません。法

墓所,霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるものとは,直接的な祖先祭祀のための設備・施設に限定されず,日常礼拝することにより間接的に祖先祭祀等の目的に結びつくものも含みます。

ただし,商品・骨董品・投資の対象として所有場合は非課税にはなりません。

② 庭に設置するもので宗教のニュアンスの有無が曖昧なもの

例えば,神や稲荷などを奉る施設です。地価が高い場所では,これらの施設の敷地部分が相続税の課税対象となるかどうかで大きく税額が異なります。

この点,ほこらがある場所は非課税となると判断した裁判例があるため,生前の相続税対策としてほこら設置が静かなブームとなっています。相続を見越したほこらの設置という意味で「たびのとびら」というネーミングの商品がありました。

※アレフガルド伝説「ほこらの中にあるたびのとびらに入ると黄泉の国に移動する」

非課税扱いの庭内神(ほこら系)とは,ご神体を祀り日常礼拝の用に供されているものです。例えば,屋敷内にある神の社・祠(ほこら)などは,墓地・礼拝施設として相続税が非課税となります。ここで「ご神体」とは,特定の者または地域住民の信仰の対象とされているもののことで,不動尊・地蔵尊・道祖神・庚申塔・稲荷などです。

その他,神棚・神体・神具・仏壇・位はい・仏像・仏具・古墳などの小規模グッズは非課税扱いです。非課税あ設置の静かなブーム

きつね

その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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