介護の事故などで、弁護士に依頼するメリットとは

author:弁護士法人AURA(アウラ)
介護事故で施設や事業者と争う場合、弁護士の介入により納得できる解決を実現することを目指すことができます。例えば示談交渉や要望を伝えたりすることができること、また裁判で勝訴することができると希望額の賠償金を受け取ることができます。

このコラムでは、弁護士に法律相談や対応を依頼するメリットについて詳しくご紹介します。

介護事故を弁護士に相談・依頼するメリット

  • 専門的な見立てからアドバイスしてもらえる
  • 適切な賠償額の算定
  • 本人や家族の負担軽減

専門的な見立てからアドバイスしてもらえる

損害賠償請求の可否について

介護施設やサービス利用中に生じた事故だからといってすべての事故を運営側(施設やサービス提供事業者など)の責任として追及できるというわけではありません。則として運営側に安全配慮義務違反が認められる場合のみ、損害賠償請求が可能となります。
しかし、法律などの専門的知識がないと該当案件で運営側の安全配慮義務違反に当たるのか判断できない場合もよくあることです。まず弁護士に相談することで運営側の責任を追及することができる事案であるか見極めてもらいましょう。

介護事故における、誰にどのような責任が生じるのかについての詳しいコラムはこちらをご覧ください。

過失相殺による減額の程度について

介護事故ではよくあるのは、後遺障害(後遺症)に関してよく争点にあげらることがあります。まず、後遺障害(後遺症)とは、病状が治癒した後に体に残ってしまった障害のことを指します。誤嚥や転倒等によって障害状態に陥る被害者も少なくありません。後遺障害が生じた場合、障害の程度を示す後遺障害等級を明確にし、等級に応じた請求を行う必要があります。しかし介護事故では、交通事故や労災事故の場合と違って認定機関が存在し障害の後遺障害等級を決めてもらえるような機関などは存在しません。そのため、介護事故の場合は後遺障害等級表をチェックしどのような等級に該当するのかを自分で決めなくてはなりません。このよう判断を素人がすることはとても難しいのが事実です。弁護士に相談し、専門的な知見を頼り該当する後遺障害等級を明確にしましょう。

適切な賠償額の算定

被害者側(家族など)が自ら運営側(施設や事業所など)と交渉し、賠償額の提示を受ける場合もあると思います。しかし、運営側から提示される賠償金額は実際に裁判で獲得できる金額より低く手設定されている場合があります。介護問題だけではなく様々な賠償事件の相場を把握している弁護士の力を借りることで提示額の検証や引き上げが可能になります。さらに運営側の把握しきれていない損害の発見をすることなどで賠償額に追加できる可能性もあります。適正な金額を請求できるようにするためにも弁護士に相談すること大切です。

本人や家族の負担軽減

損害賠償の請求を素人が行うこと自体大変な作業であり、ましてや家族を任せている状況が継続している場合や亡くされている状況などの中で交渉や裁判手続きなどを行うこと自体、とても大きな負担です。どのような状況であれ基本的に経験がない以上適切な交渉や裁判鉄好きを行うことは困難です。
介護事故のような状況では、いきなり裁判で弁論が行われるのではなく、その前に運営側と示談による話し合いを行ったうえで裁判に移行するのが一般的な流れになります。弁護士に依頼することで、運営側との交渉は代わりに行ってもらえます。また、裁判で勝利するためには証拠の提出が求められますが、遺族の方はどのような書類が必要か判断できないケースが多いです。証拠書類は弁護士を通じた請求も可能です。施設側が証拠を改ざん・隠蔽する可能性があるなら、裁判所に対して証拠保全請求も実施できます。面倒で煩雑な手続きの多くを弁護士に任せることが可能なので、介護事故で弁護士に依頼するメリットは大きいです。
内縁関係と認められないカップル

介護事故を弁護士に依頼した後の対応

介護事故を弁護士に依頼するとどのような流れで解決に向けて進んでいくのかなどの流れを解説します。依頼した弁護士や事案の内容によって進め方は異なりますが、一般的に考えられる主な流れを紹介します。

証拠の収集や確保などの準備

手元の資料のみでは今後の見通しがつかないような場合など、弁護士は介護事故に関する資料を収集したり、調査を行うことがあります。そして集めた資料から、施設側に対する責任を追及できるかどうかを調査が始まります。調査の方法は、施設側に資料提供を依頼することもあれば、証拠保全という手続きをとる場合もあります。証拠保全とは、施設側に証拠隠滅の恐れがあるような場合、裁判所に申し立てを行い、認められれば相手に対する証拠の提示命令が裁判所から出されるものです。

示談交渉

一定の調査が行われて資料が集まる。そして今後の見通しをたてたうえで施設側との示談交渉をスタートさせます。示談交渉とは、話し合いによって争いの解決を図る方法です。一般的に、いきなり裁判を起こすのではなく、示談交渉からはじめるケースがとても多いです。というのも、裁判というのは訴訟費用や時間などの負担が当事者双方にかかるため、できれば示談交渉で解決したほうが負担が少なく済むことが多いからです。
もちろん、事案の内容によっては示談交渉を行わずに裁判を提起した方がいいケースもありますが、どの方法を選ぶかは依頼した弁護士と慎重に検討する必要があります。示談交渉では、生じた介護事故の事実関係を整理し、どのような責任が誰にあり、どのくらいの損害賠償金を支払うのかなどについて話し合いを行います。

調停や裁判へ移行することもある

示談交渉は、当事者双方が納得する落としどころを話し合いで探し決めていくことになります。したがって当然、当事者双方の意見があわず、解決に至らないという可能性も大いにあります。示談交渉で解決に至らない場合は、調停や裁判へ移行することになります。調停とは、裁判所の調停委員などの第三者が介入する話し合いで争いの解決を図る方法です。示談交渉で解決に至らない場合、調停か裁判のいずれかに発展することが予想されますが、裁判と比べて調停は費用も時間もかからないという点からこのような選択がされることがあります。裁判とは、裁判所が法廷で当事者双方の言い分を聞いたり、証拠を確認して、裁判所の判決で争いの解決を図る方法です。弁護士でなくとも裁判手続きを行うことができますが、訴状や証拠の提出など煩雑な手続きが多いので、法律の専門家である弁護士に任せてしまえば安心です。

介護事故を弁護士に依頼する時のよくある疑問

被害者本人ではなく家族でも依頼可能なのか?

介護施設に入居されているような方は、認知症などで判断能力が難しい場合があります。このように被害者本人に判断能力がないような場合、家族というだけで弁護士に依頼することはできるのでしょうか疑問があると思います。弁護士に依頼するということは、施設側に対する損害賠償請求を進めていくということになります。被害者本人が存命している場合、損害賠償請求は基本的に被害者本人の意思が必要です。
判断能力のない被害者本人に代わって、家族が損害賠償請求をしたい場合、まず家庭裁判所に「成年後見人」の申し立てをして、就任する必要があります。そして成年後見人となってから弁護士と当該案件についての依頼が可能になります。
成年後見人の申立てについても弁護士法人AURAは取り扱っておりますので気軽にご相談下さい。
弁護士法人AURA:成年後見・任意後見について

介護事故で被害者が亡くなった場合はどうなる?

介護事故で被害者が亡くなられた場合は、被害者の相続人が損害賠償請求することができます。

相続人

配偶者は常に相続人となりますが、被害者が死亡した場合は以下の順で権利を引き継ぎます。
  • 子、孫などの直系卑属
  • 父母、祖父母などの直系尊属
  • 兄弟姉妹または兄弟姉妹の子

配偶者・子・父母

被害者が死亡した場合は損害賠償請求の権利を引き継ぐとともに、自身に対する慰謝料の請求権も持ちます。請求権者が複数人いる場合は、代表者を一人決めて委任します。

弁護士費用の体系はどうなっている?

弁護士を依頼する時にかかる費用がどうなっているのか気になると思います。弁護士費用はさまざまな体系が考えられますが、一般的には相談料・着手金・成功報酬金・日当・実費などの項目を合計したものが弁護士費用となることが多いでしょう。弁護士法人AURAでは、お客様ひとり1人の状況をまずお伺いさせて頂いております。

その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

介護事故の裁判事例

誤嚥に関する事例 (鹿児島地裁平成29年3月28日判決)
本事例では介護施設に入居する男性が誤嚥により窒息し、低酸素脳症を発症してしまいました。誤嚥の可能性があるロールパンをちぎらずにそのまま与えたことに対して、事故のリスクを認識していながら回避の措置を取らなかったことが施設側の義務違反だと判断されたのです。裁判所が命じた損害賠償額は慰謝料を含め、3,600万円にも上りました。誤嚥事故は死亡に至る可能性が高いので、転落事故等その他の事故と比較し慰謝料が高額になる傾向があります。
グループホームの入居者であった93歳の男性が窓から転落した事例 (東京地裁平成29年2月15日)
グループホームの入居者であった93歳の男性が窓から転落した事案です。高齢者が転落した窓はストッパーが備わっていたものの、ロックがかかった状態でも20センチ程度開くことができ、少し力を入れて窓を動かせば鍵を使わずに窓が解除できてしまう危険な仕様でした。本事案ではこの窓が通常有すべき安全性を欠いていたと判断され、施設側の工作物責任を認めています。工作物責任とは工作物に欠損や欠陥が生じていたことを原因として他人に損害を与えた場合、その工作物の所有者が問われる責任を指します。(民法717条1項)賠償金は慰謝料を含め、約1,000万円が命じられました。
判決では「被害者は認知症患者であったこともあり、通常の高齢者と比較し予想だにしない行動を取る危険が高いため、事故防止の十分な対処策を取るべきだ」とも述べられています。
転落事故について過失相殺が考慮された事例 (福岡地判平成28年9月12日)
転落事故について過失相殺が考慮されたケースとして紹介します。過失相殺とは事故が起きた際、被害者側にも落ち度がある場合、損害賠償額から被害者の落ち度の割合だけ減額する制度のことです。介護事故では認知能力が乏しい高齢者の行動も一つの要因となり、事故が起きてしまうケースがあります。本事案では当時100歳であったショートステイ利用者の女性が自宅まで送迎してもらった際、足を踏み外して階段から転落してしまいました。後頭部を強打し脳挫傷に陥り、病院に運ばれましたが治療のかいなく死亡してしまいました。本件では施設側の安全配慮義務違反が問題となっています。当時は雨が降っており、かつバランスを崩しやすい階段を歩行中の出来事であったこと、階段を上る際に体を支える等のサポートを行い、転落を防止するべきだったことを理由に安全配慮義務に違反すると判断されました。損害賠償額は被害者遺族の慰謝料や入通院にかかった費用から過失相殺により3割控除され、約1,350万円が支払われています。

その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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