目次
共有物に関する負担の基本
共有物に関する負担について,民法上特殊な扱いがあります。本記事では,共有物に関する負担の基本的事項を説明します。
共有物に関する負担の規定の基本
共有物に関する金銭的負担について,民法253条が規定しています。まず,この規定の基本的事項をまとめます。
<共有物に関する負担の規定の基本>
あ 基本
各共有者は持分に応じて次の『い・う』を負担する
い 管理の費用
共有物の維持・利用・改良のための必要費・有益費
※『新版注釈民法(7)』有斐閣p458
う その他の負担
共有物の存在から直接生じる費用
※民法253条1項
共有物に関する負担の具体例
共有物に関する負担の具体的内容をまとめます。
<共有物に関する負担の具体例>
あ 管理の費用|必要費
経費の種類 | 根拠 |
老朽化に対する修繕費用 | ― |
災害による損壊の修繕費用 | ― |
山林の監守費用 | 大判昭和7年6月8日 |
い 管理の費用|有益費
経費の種類 | 根拠 |
通路のコンクリート敷設・電灯設置 | 大判昭和5年4月26日(※1) |
商店の模様替え=表入口の改装 | 大判昭和7年12月9日(※1) |
※1 いずれも『有益費』に該当するという判断である
う その他の負担
経費の種類 | 根拠 |
固定資産税・都市計画税 | ― |
マンションの管理費・修繕積立金 | ― |
共有物に関する負担に該当しない例
共有物に関連しても共有物に関する負担に該当するとは限りません。
近いけれど該当しないという具体例を紹介します。
<共有物に関する負担に該当しない例>
経費の種類 | 根拠 |
土地管理の管理報酬 | 東京地裁平成14年2月28日 |
建物の水道光熱費 | ― |
個性的な嗜好・趣味による造作設置 | ―(※2) |
※2 物の価値が増加しない→『有益費』に該当しない
共有物に関する負担の立替と求償
共有物に関する負担を実際に分ける方法をまとめます。
<共有物に関する負担の立替と求償(※1)>
あ 不動産の共有
不動産をA・B・Cで共有している
各持分=3分の1
い 費用の立替
固定資産税をAが全額納付した
う 求償
AはB・Cに3分の1ずつを請求できる
共有物の固定資産税・都市計画税の連帯納付責任(参考)
ところで,共有物の固定資産税や都市計画税は,共有者全員に連帯納付責任があります。そこで,納付しない場合,自治体が共有者のうち1人に対して未納付額全額を請求し,差押をするということもあり得ます。連帯納付責任については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|税務上の連帯納付責任の基本(相続税・贈与税・固定資産税)
共有物に関する負担に該当しない出費の求償
共有物に関する負担に該当しないものもあります(前記)。
その場合でも,求償が認められないとは限りません。
<共有物に関する負担に該当しない出費の求償>
あ 『費用』に該当しない|具体例
建物をA・Bで共有している
A・Bが共同で利用している
建物の『水道光熱費』について
→建物の維持に必要不可欠とは言えない
→『共有物に関する費用』には該当しない
い 出費×求償
Aが『あ』の水道光熱費を立て替えた場合
→Bに不当利得として返還を請求できる
※民法703条
共有物に関する債務の特定承継人への承継(概要)
共有物に関する負担などの債務は特殊なルールがあります。共有持分を購入した者(新たな共有者)も負担を承継するのです。
<共有物に関する債務の特定承継人への承継(概要)>
共有持分の特定承継人(譲受人)は,共有関係と相分離しえない権利関係(負担)を承継する
共有物に関する共有者間の債務もこれに含まれる
共有持分の譲渡人と譲受人は連帯して債務を負う
※民法254条
詳しくはこちら|共有持分譲渡における共有者間の権利関係の承継(民法254条)の基本
共有物に関する負担の対外的効果(概要)
以上の説明は共有者の間での関係でした。
これとは別に共有者以外の人との関係もあります。
共有者間・それ以外の人との関係は法律上別の扱いとなります。
共有者以外の人との関係については別に説明しています。
詳しくはこちら|共有物に関する負担|対外的効果|不可分債務
その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。