再出発への手助け!離婚後の生活保護の利用について

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人生には予期せぬ困難が待ち受けていることがあります。離婚後、新たなスタートを切るためには、時に支援を受けることが不可欠です。その中でも、生活保護制度は生活困窮者の手助けとして大きな役割を果たしています。しかし、離婚後に生活保護を受けるためには、注意が必要なポイントがいくつか存在します。このコラムでは、離婚後の生活保護に関する一連の手続きや注意事項を解説し、再出発をサポートする情報を提供します。

ひとり親も対象:生活保護制度の詳細解説

生活保護制度の基本

生活保護制度は、経済的に困難な状況にある人々に対して、その困窮程度に応じた支援を提供し、健康的で文化的な最低ラインの生活を確保するための制度です。この制度は、人々が自立する手助けも大きな目的としています。つまり、支援を受けつつも、自分で生活を立て直し、将来的には保護なしでも生活できるようにすることを促しています。

資産活用が前提

生活保護の利用に際しては、保護を必要とする方々の資産や能力を最大限に活用することが原則となります。一般的には不動産や預貯金、自動車など、保有している資産を活用することが求められます。ただし、不動産や自動車に関しては例外的なケースも存在します。

例えば
地域の交通機関が不便で、通院などに自動車が必要不可欠だと判断される場合、自動車の保有が認められることがあります。同様に、資産価値が低くて広範囲でない不動産についても、保有が認められることがあります。詳細については地域の福祉事務所で情報を得てみましょう。

離婚したシングルマザーやひとり親への支援

離婚したシングルマザーやひとり親の方々も、生活保護を受ける際には状況に応じた制約が存在します。この点については、次の章で詳しく説明します。生活保護制度を理解し、必要な支援を受けるためのステップを踏み出してみましょう。

離婚後のシングルマザーやひとり親も注目!生活保護の受給条件と制約とは

生活保護の受給条件の概要

離婚後に生活保護を受けるための給付条件について、詳しくご紹介いたします。シングルマザーが養育費を受けている場合でも、生活保護の受給は可能です。以下に、受給条件を詳しく解説します。

受給できる条件

離婚後に生活保護を受給できる条件は次の通りです。

  1. 最低生活費を下回る世帯収入
    厚生労働省が定める最低生活費を下回る世帯収入の場合に受給可能です。最低生活費は住む地域や世帯人数、世帯員の年齢などによって異なります。
  2. 資産を充当しても最低生活費に達しないこと
    保有している資産を充当しても最低生活費に達しない状況であることが条件です。資産には不動産や預貯金、自動車、有価証券などが含まれます。
  3. 病気や怪我、年齢などによる働けない状態
    病気、怪我、年齢などの理由で働けない状態であることが条件です。健康で働ける場合には生活保護の対象にはなりません。
  4. 親族からの援助を受けられないこと
    3親等以内の親族からの援助を受けられない状況であることが条件です。親族からの援助を受けることが難しい場合に対象となります。
  5. 他の公的支援でも最低生活費に達しないこと
    他の公的支援(例:児童手当、児童扶養手当、児童育成手当など)を受けても最低生活費に達しない状況であることが条件です。

条件の詳細解説

それぞれの条件について詳しく解説します。

  1. 最低生活費を下回る世帯収入
    最低生活費は、地域や世帯の状況によって異なります。自身の住んでいる地域の最低生活費を確認しましょう。例えば、都内23区の3歳の子どもと29歳の母親の場合、最低生活費は121,110円とされています。保有している資産を含めても最低生活費に達しない場合に対象となります。
  2. 資産を充当しても最低生活費に達しないこと
    不動産や預貯金、自動車、有価証券などの資産を充当しても最低生活費に達しない状況であることが条件です。ただし、生活必需品や生活に必要な資産(例:家具、家電)は保有していても問題ありません。
  3. 病気や怪我、年齢などによる働けない状態
    病気、怪我、年齢などの理由で働けない状態であることが条件です。ただし、一般的に健康で働ける場合には生活保護の対象にはなりません。
  4. 親族からの援助を受けられないこと
    親族からの援助を受けることが難しい状況であることが条件です。3親等以内の親族には扶養義務があるため、まずは親族から援助を求めることが求められます。
  5. 他の公的支援でも最低生活費に達しないこと
    他の公的支援を受けても最低生活費に達しない状況であることが条件です。他の支援を先に受ける必要があり、それでも最低生活費に満たない場合に対象となります。

受給できない条件

一方、以下のケースでは生活保護の対象外となりますので、注意が必要です。

  1. 高額な預貯金の場合
    生活保護を受給するためには高額な預貯金は生活費に充当する必要があります。高額な預貯金を保有している場合、生活保護の対象外となる可能性があります。
  2. 借金をした場合
    借金がある場合、または生活保護を受給した費用を借金返済に充てることは禁止されています。
  3. 高価な資産を持った場合
    不動産、車、株式、貯蓄型の保険などの高価な資産を持っている場合、生活保護の対象外となります。ただし、生活に必要な資産(家具、家電など)は保有していても問題ありません。
  4. 資産性のある生命保険に加入した場合
    貯蓄型の生命保険に加入している場合、受給前に生活費に充当する必要があります。生命保険の種類によって受給条件が異なるため、確認が必要です。
  5. 住宅扶助の上限値以上の住宅に住んだ場合
    生活保護受給者は、住宅扶助の上限値を超える住宅に住むことができません。住宅の制約にも注意が必要です。
  6. 再婚や養育費で最低生活費以上の収入がある場合
    再婚による収入増や、養育費で最低生活費以上の収入がある場合、生活保護の対象外となります。

これらの条件を理解し、必要な支援を適切に受けるためのステップを考えてみましょう。

生活保護の受給内容:8つの扶助

生活保護を受ける際の支給内容について

生活保護には8つの扶助があります。それぞれの扶助には金額が設定されており、ケースワーカーが必要な給付を調査し、その人の生活に合わせて支給されます。

生活扶助

生活扶助は8つの扶助の中でも重要な柱です。食費や衣類代、光熱費など、生活に必要な費用をカバーする支給です。基準額は、個人の食費などの個人費と世帯全体の光熱水費などの共通費を合算して算出されます。特定の世帯には加算があります(母子加算など)。

住宅扶助

家賃や部屋代、地代、住宅の修繕費用、更新料、引っ越し費用などに対する支援です。定められた範囲内で実際の費用が支給されます。

教育扶助

子どもの義務教育に必要な学用品費(学級費、教材費、給食費、通学費)に対する支給です。設定された基準額が支給されます。

出産扶助

出産にかかる病院や助産施設の費用をカバーする支援です。定められた範囲内で実際の費用が支給されます。

医療扶助

病気やケガの際の治療や手術、薬などの医療費用に対する支援です。支払いは直接医療機関に行われるため、本人負担はありません。

介護扶助

介護サービスの費用をカバーする支援です。支払いは介護事業者に直接行われるため、本人負担はありません。

7. 生業扶助
就労に必要な技能修得などにかかる費用を支援する制度です。高等学校などの学費も生業扶助の一部です。実際の費用が支給される範囲が定められています。

葬祭扶助

葬儀、火葬、埋葬などに関する費用を支援する制度です。設定された範囲内で実際の費用が支給されます。

具体的な支給額の例

以下に、具体的な事例を通じて、どのくらいの支給額が考えられるかを見ていきましょう。ただし、以下の金額はあくまで概算であり、正確な金額は各市区町村の役所で確認が必要です。

地方在住20代女性の場合

  • 状況:離婚して一人暮らし、就職が難しく生活困窮
  • 扶助内容:
  • 生活扶助基準額:68,430円
  • 障害者加算:0円
  • 母子加算:0円
  • 児童養育加算:0円
  • 住宅扶助基準額:35,000円
  • 合計生活保護費:103,430円

母子家庭の場合

  • 在住地:東京23区内
  • 状況:離婚した30代女性、子ども2人
  • 扶助内容:
  • 生活扶助基準額:121,110円
  • 障害者加算:0円
  • 母子加算:18,800円
  • 児童養育加算:10,190円
  • 住宅扶助基準額:64,000円
  • 合計生活保護費:214,100円

障がい者をもつひとり親家庭

  • 在住地:関東近郊
  • 状況:障害のある30代女性、子ども2人
  • 扶助内容:
  • 生活扶助基準額:135,320円
  • 障害者加算:16,620円
  • 母子加算:21,800円
  • 児童養育加算:20,380円
  • 住宅扶助基準額:38,000円
  • 合計生活保護費:232,120円

これらの例から分かるように、生活保護は個々の状況や地域によって異なる支給額が設定されています。必要な支援を受けるためには、自身の状況に合わせた正確な情報を得ることが重要です。

わかりやすく解説!生活保護の申請手続き

生活保護の申請方法と手続き

生活保護制度は、困窮した人々が利用できる大切な制度です。申請手続きや注意すべきポイントについて、以下で分かりやすく解説します。

前提確認:離婚後の配偶者や子どもへの権利

生活保護を申請する前に、まずは離婚した場合でも元配偶者から請求できる財産分与、慰謝料、養育費などがあるか確認しましょう。また、子どもに対しては元配偶者でも扶養義務があるため、養育費の支払い能力があるなら請求してみることも検討すべきです。さらに、3親等以内の親族からの支援も可能性として考えましょう。もし最低生活費を賄えない状況であれば、以下の手順で生活保護申請を進めていきます。

ステップ1:福祉事務所への申請

最初に、居住地の管轄内にある福祉事務所の生活保護担当へ申請を行います。必要な書類は以下の通りです。

  • 生活保護の申請書・申告書
  • 本人確認書類(運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど)
  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 収入に関する書類(通帳や給与明細など)
  • 資産に関する書類(不動産、自動車、保険などの有無を証明する書類)
  • 働けない理由を証明する書類(障害者手帳など)

担当者は、現在の生活状況や家族構成などを詳しく確認します。スムーズな申請のために、必要書類を準備しておくことが重要です。

ステップ2:生活保護の調査

申請が受理されると、福祉事務所の担当者が調査を行います。養育費や元配偶者の支払い能力などについても確認されますので、事前に情報を整理しておくことが役立ちます。3親等以内の親族からの支援の有無も確認されるため、申請前に親族に相談しておくと良いでしょう。また、資産や借金の状況もチェックされるため、正確な情報を提供しましょう。

ステップ3:生活保護の受給

調査後、審査が行われ、約2週間ほどで申請結果の通知が届きます。受給が認められれば、毎月初めに生活保護を受けることができます。ただし、受給日は地域によって異なるため、福祉事務所で確認しておきましょう。

生活保護申請の際には、自宅訪問が行われることもあります。資産状況や生活状況が詳細に審査されるため、事前に準備しておくと良いでしょう。また、正直な情報提供が重要です。虚偽の情報を提供しないよう注意しましょう。

離婚後の生活保護申請:重要なポイント

離婚後に生活保護を受ける際の注意事項

離婚後に生活保護を受給する際には、いくつか重要なポイントに気を付ける必要があります。以下に注意すべき事項を明示してみましょう。

生活保護費の使い方には要注意

生活保護費の使途は自由ですが、高価な贅沢品や資産になるような大きな支出は避けましょう。また、ギャンブルで得た収入も収入とみなされます。ギャンブルに使ってもバレにくいかもしれませんが、発覚すれば生活保護の打ち切りや返還を求められる可能性があります。

ローンやクレジットカードの制約

生活保護受給者は新たにローンを組むことやクレジットカードを作成することが制限されます。生活に困窮している状況では、これらの制約は避けるべきでしょう。ただし、デビットカードやスマホ決済などの代替手段も活用できることを覚えておきましょう。

収入申告とケースワーカーのチェック

生活保護受給者は毎月の収入を申告しなければなりません。さらに、ケースワーカーが定期的に生活状況をチェックすることもあります。不正な収入や生活に異常がある場合、生活保護が打ち切られる可能性があります。

偽装離婚は不正行為

生活保護を不正に受給するために偽装離婚を考える人もいますが、これは法律違反です。発覚すれば生活保護費の返還だけでなく、偽装離婚自体が刑事罰の対象になることも。具体的には「公正証書原本不実記載罪(刑法157条第1項)」に該当します。また、偽装離婚で子どもを保育園に入れることを試みる場合も注意が必要です。発覚すれば保育園退所や詐欺罪の可能性も考えられます。

生活保護継続のために、事実婚などの隠蔽行為も避けましょう。ケースワーカーは細かな点にも気づくことがありますので、正直な生活状況を保つことが重要です。

生活保護と子供の将来に関する疑問について

1. 生活保護受給歴の戸籍への記載

生活保護を受けていたことは、戸籍に記載されることはありません。しかし、生活保護を受給している間には、所有する車や財産の所有などに制限がある場合もあります。ただし、これは同一世帯の子供に影響を及ぼす可能性がある部分です。生活が安定し、将来的に生活保護を受給しなくなる場合も考慮されます。

2. 親権に関する影響

生活保護を受けていることを理由に親権を奪われることはありません。受給歴が親権に影響を与えることはありません。親権に関する判断は、生活保護の受給歴とは別の要因に基づいて行われます。

3. 周囲の人に知られること

生活保護を受給していることは、基本的には公開情報ではありません。そのため、周囲の人に知られることは少ないです。ただし、生活保護を受ける際に親族への扶養照会が行われることがあるため、親族には知られる可能性があります。また、生活保護の受給により国民健康保険の資格がなくなり、保険証を使えなくなることもあり、そのことから知られる可能性がある点に注意が必要です。

生活保護受給者の情報はプライバシーが尊重される一方で、一定の手続きや制約があることを理解しておくことが重要です。

まとめ

新たな人生のスタートは、誰にとっても挑戦的なものです。離婚後の生活保護は、一時的な支援を通じて再び立ち上がるための一助となる制度です。しかし、その際には生活保護の受給方法や注意点を把握しておくことが大切です。適切な手続きを踏みつつ、誠実な姿勢で挑むことで、新たな可能性が広がるでしょう。離婚後の人々にとって、生活保護は再出発への一つの道と言えるかもしれません。

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