遺産共有と物権共有の混在

author:弁護士法人AURA(アウラ)
男性

遺産の共有持分の譲渡と分割手続

遺産分割が未了である場合,普通であれば遺産分割によって共有状態が解消されます。しかし,遺産分割未了の状態で,共有持分を譲渡することは可能であるため,相続人の1人が共有持分を譲渡すると,譲受人の得た共有持分は遺産ではなくなるので,遺産共有の中に物権共有が含まれている状態となります。

この場合,遺産ないし共有物を分割をする場合には,遺産分割と共有物分割のどちらを用いるかが問題となります。

〈事例〉(最高裁昭和50年11月7日)

不動産を所有していたAが亡くなった。
相続人B,C,Dが相続し,不動産はB,C,Dの遺産共有となった。

Bが第三者Eに共有持分を譲渡した。Eが分割の請求をしたい。

分割手続の種類

全体が遺産共有であるとはいえないため,遺産分割の手続は使えないので,消去法的に共有物分割の手続を用いることになります。
ただし,共同相続人(相続人グループ)の有する持分は遺産共有なので,共有物分割手続の中で,遺産については,遺産分割によって分割することになります。すなわち,まず共有物分割手続により,持分譲受人Eに分与する部分と,C及びDを一体としてC及びDに分与する部分を決め,C及びDは,共有物分割によって得た財産の全体を改めて(次の手続として)遺産分割手続によって分割するという2段階重構造として扱います。


・Eに分与する部分
・C+Dを一体として分与する部分を決定

 →分与された部分をCとDで遺産分割の対象とする。

当事者

相続人の1人が共有持分を譲渡した場合,遺産共有の中に物権共有が含まれる状態となり,共有物分割を用います。

この場合,譲受人Eは,共有物分割請求をすることになりますが,Bを相手方とすることはできません。Bは,相続人の地位は維持していますが,遺産の共有者ではなくなっているため,当事者の資格をもたないからです。

Bを相手方に加える必要はないというのが判例です。

共同相続人間での共有持分譲渡(包括的判別基準)

相続人Aが共有持分権を他の共同相続人Bに譲渡した場合,Bは,共有物分割請求をするのか,それとも,遺産分割手続だけをとることができるのかについての判例はありません。

共同相続人間での共有持分譲渡だけでなく,共有持分譲渡が繰り返された場合などのイレギュラーな事態を含めて包括的に判別する基準として,当事者に着目するという見解があります。

当事者の全員が相続人であれば遺産分割,当事者に1人でも相続人以外の者がいれば共有物分割という振り分けです。遺産分割の手続によるか共有物分割の手続によるかの区別は,分割の客体が相続財産であるか否かという点にあるのではなく,共同所有している権利者全員が共同相続人であるか否かにかかるという基準です。

この基準によれば,共有持分譲渡が繰り返された場合などの複雑なケースでも明確に判定できます。例えば,相続人Aが第三者Bに持分を譲渡したが,Bが共有物分割を請求しないまま再度その持分を相続人Cに譲渡した場合には,遺産分割だけが許されることになります。

老夫婦

共有物分割後の相続人取得分の遺産分割

2段階目の遺産分割では,持分の譲渡人である相続人が第三者に譲渡した財産のうち残部を取得できるかどうかについて,統一的な見解はありません。

〈設例〉

相続人AがDに遺産の中の特定の不動産(甲)についての持分を譲渡した後,DがAの共同相続人B,Cに対して共有物分割請求をした。
B・C・D間の共有物分割(現物分割・全面的価格賠償・組合せ)として,C・Dが甲を取得した。
その後,共同相続人A・B・Cが遺産分割をする場合,甲をAの所有とすることはできるのでしょうか。

〈考察〉

1段階目の共有物分割手続は,「Dに対する分与部分とB・Cに対する分与部分に分割することを目的とするもの」(最高裁昭和50年11月7日)であるとすれば,2段階目の遺産分割手続では,残余部分(B・Cに対する分与部分)をAの所有とすることは認められないとするのが論理的であるようにも思えます。

しかし,遺産分割は民法906条の基準に従って合目的的になされるべきものであるとすれば,Aの所有とすることを否定するべきではないとも考えられます。

いずれの結論が妥当であるかは残された課題です(佐藤義彦稿「遺産分割か共有物分割か」判例タイムズ671号p93)。

関係者全員の同意による解決

共有者の中に,相続人と相続人以外の者が含まれる場合(遺産の処分または共有者の相続)
遺産分割を行ってから共有物分割を行う方が合理的であるともいえます。そこで,1つの手続にまとめる方法をとるのが合理的です。

〈一般調停〉

一般調停で相続人以外の者も含めて協議し,協議が成立した場合,調停条項を作成しつつ,別途遺産分割協議書を作成する方法です。
〈遺産分割調停〉

遺産分割調停を申し立て,相続人以外の者を利害関係人として関与させる方法です。
上申書を添付して事情を説明しておくのです。
ただし,利害関係人が遺産分割調停に参加することを強制する手段はありません。

相続分の譲渡・放棄

相続人の1人が第三者に相続分を譲渡する場合,相続人の地位ごと譲受人に移転するので,譲受人も含めて遺産分割ができます。

相続分の放棄は,相続人としての地位を維持したままで,自己の相続分のみを放棄する単独行為です。遺産分割における当事者適格を失います。
詳細は,相続分の譲渡,相続分の放棄,共有持分の放棄

物権共有中の遺産共有

遺産共有中に物権共有が含まれるのではなく,物権共有中に遺産共有が含まれる場合の分割手続についても,共有物分割によります。

詳細は,共有関係を解消(離脱)する方法

自然

その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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