共有関係を解消(離脱)する方法

author:弁護士法人AURA(アウラ)
男性

共有関係を解消する方法

共有状態を解消することにつながる制度はいくつかあります。

① 持分買収権の行使

② 持分買取権の行使

共有者間で共有持分を強制的に買い取る方法です(民法253条2項)
買い取られた者は共有関係から離脱します。

③ 持分放棄

放棄した者の共有持分が他の共有者に帰属します。
放棄した者は共有関係から離脱します。

④ 共有物分割請求

共有状態を解消することを直接的な目的とします。
このうち共有者の1人が他の共有持分を買い取る全面的価額賠償(民法258条)があります。

持分買取と似た結果となります。

持分買取権の行使

共有物分割の手続の中で,共有物に関する債権を回収する特別の扱い(民法259条)もあります。債権回収の一般的な方法は,訴訟や差押えなどですが,共有者の間で費用(出費)の分担がなされない場合,持分買取権の行使をすることができます。持分買取権は共有物に関する債権の実現方法の1つです。

〈典型例〉

土地・建物をA・Bで共有(各2分の1)している。

固定資産税・管理費をAが全額支払っている。

AはBに立替金の半額の支払を求めた。

Bは一向に支払わない。

持分買取権行使の手続

理論的には,持分買取の意思表示によって持分は移転し,Aの単独所有となるので,口頭による意思表示でも可能です。

〈典型例〉の場合,AがBに対し,Bの持分割合相当額を費用請求(求償)を通知したにもかかわらず,Bは支払わないとき,Bが請求を受けた日から1年が経過すると,AはBに対し,Bの持分に相当する評価額を提供することによって,Bの持分を買い取ることができます。

※「通知を受けていない」という反論をさけるため,実務では通常,内容証明郵便により通知します。

持分を取得する意思表示は,償金の提供とともに行う必要があります。

※償金の金額とは,対象となる共有持分の評価額ですが,実際に共有持分買取権を行使する場面では,償金(持分の対価)の金額についての争いとなります。

Bが共有持分をAに移転させる登記に協力しない場合,Aは持分移転登記手続請求訴訟を提起し,勝訴判決の確定により,持分移転登記の申請手続をします。

共有持分の放棄(スピーディーに離脱する方法)

詳細は,共有持分の放棄

男性と女性

共有物分割

① 分割方法の3類型

共有物分割の方法には,全面的価格賠償,現物分割,換価分割の3つの方法があります。

実務では,この分割類型を組み合わせて採用することがあります。

<現物分割と価格賠償の組み合わせ>

現物分割をすると価値の過不足が生じる場合,補償金で調整します(部分的価格賠償9。

現物分割の一態様ともいえるし,現物分割と価格賠償の組み合わせともいえます。

〈物理的な部分ごとに分割類型を選択した裁判例〉(東京高判平成6年2月22日)

共有物分割の対象である(複数の)財産のうち一部を共有者の1人が単独で取得する(全面的価格賠償),残部を競売にする(換価分割)という結論をとりました。

② 複数の財産を対象とした共有物分割(一括分割)

共有物分割は,複数の財産を対象とすることも可能です。

複数財産をまとめて共有物分割をすると,個々の財産だけではできなかったような分割方法をとることができます。

共有解消制度の比較

比較項目持分買取権持分放棄共有物分割
共有状態の解消(離脱)
最終結果の確実性中程度確実不確実
対価・代金の発生対価を払う対価を得られない対価が生じる
手続・手間の大きさ中程度小さめ大きめ

① 共有持分の放棄の特徴

放棄をした者は共有関係から外れます。
残る権利者が1名であれば共有状態が解消されます。

通知により確実に単純な法的効果が発生するので,確実です。
放棄した者は,失った共有持分の対価をを得られません。

通知だけで法的効果が発生しますが,「登記の引取」請求訴訟が必要なことがあります。

② 持分買取権の特徴

共有物に関する負担」の求償から1年間の不履行があることが前提ですが,その前提さえあれば,通知により法的効果が発生します。ただし,「償金(持分の対価)の金額」により通知の有効性に影響が出ます。
持分買取権の行使者は「対価」を支払う必要があります。

法的効果は通知だけで発生しますが,金額について対立しやすく,訴訟での金額の評価なされることになります。

③ 共有物分割請求の特徴

単独所有の状態となり,共有状態が解消されます。

3つの分割類型とその組み合わせがあるため,最終結果を予測しにくい特徴があります。

共有持分を失う者はその対価を得ることができ,共有持分を得る者はその対価を支払うことになるため,実質的な平等・公平が実現できます。
共有者全員が合意しないと分割協議は成立せず,訴訟では多くの事情(各共有者の希望・物理的状況・利用状況・資力)が判断材料となり,主張・立証の量が多くなります。

④ 選択

3つのうち,持分買取権と共有物分割は特に似ているので,実務ではどちらを選択するかが重要です。

共有者の1人が共有物の所有権(全体)を欲しい場合,共有物分割請求と持分買取権の行使があります。両者には異なる特徴があるので,個別的事情により最適な手法を選択することになります。両方を併用して請求することもあれば,一方を予備的に主張することもあるでしょう。

桜

その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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