共有持分の譲渡・放棄

author:弁護士法人AURA(アウラ)
説明解説する人

共有持分の譲渡・放棄

遺産分割が未了である状態では,普通であれば遺産分割によって共有状態が解消されます。この点,遺産分割未了の状態でも,遺産の処分,つまり共有持分の譲渡や共有持分放棄は可能です。

遺産共有の性質

遺産分割が未了の状態で相続人が複数いる(共同相続人)場合には,法定相続によって遺産は共有となっています。この共有のことを遺産共有といいます。遺産共有は,分割手続以外は物権共有(通常の共有)と同じ性質です。この法的性質は,以下説明する理論の土台となっています。※「相続財産の共有は,民法改正の前後を通じ,民法249条以下に規定する『共有』とその性質を異にするものではない。」(最高裁昭和30年5月31日)
(注・民法改正とは昭和22年改正のことです)

遺産の中の特定財産の処分

遺産共有も物権共有の性質と同じですから,共同相続人が遺産分割前にその共有持分を有効に(物権的に)処分(譲渡等)することは可能です。民法の規定も物権的処分を前提としたものがあります。

遺産の中の特定財産の共有持分の譲渡は,第三者に対してだけではなく,他の相続人(共有者)に対して行うことも想定されています。

詳細は,遺産共有と物権共有の混在

男性と女性

遺産の中の特定財産(共有持分)の放棄

一般論として,共有者は,共有持分放棄をすることができます。

詳細は,共有持分の放棄


遺産共有(遺産分割未了の状態)状態でも共有持分の放棄はできます。

共同相続人の間で遺産分割をするとか,相続分の放棄や相続分の譲渡をすることもできますが,遺産共有と物権共有は,分割手続が違うだけで,共有持分の放棄はできます。

物権共有の状態とるだけです。放棄した相続人の共有持分は,他の共有者にその共有持分に応じて帰属します。

※相続放棄・相続分放棄・相続分譲渡

相続放棄は,家庭裁判所に対する申述の手続を行うことによって,相続人ではなくなるものです。期間制限があり,特定の財産についてだけ相続放棄をするということはできません。
相続分放棄は,意思表示(通知)によって,相続人としての地位は維持しつつ,遺産分割の当事者から脱するというものです。期間制限はなく,特定の財産についてだけ相続分放棄をするということはできません。
相続放棄と相続分放棄で共通しているのは,遺産分割に参加しなくてすむようになることです。
一方,相続人が共有持分放棄をしても,相続人でもあることと,遺産分割の当事者であることは変わりません。つまり遺産分割に参加する立場は変わらないのです。また,共有持分放棄は特定の財産を対象として行います。

詳細は,相続分の放棄

共有持分の譲渡とは別に相続分の譲渡という手段もあります。

詳細は,相続分の譲渡

共有持分の譲渡と遺産分割の優劣

〈原則〉

遺産の中の特定財産(の共有持分)の譲渡は可能ですが,その後に遺産分割が合意や審判で完了した時に,その遺産の譲渡について登記がなされていれば有効ですが,登記がないと譲渡は無効(権利を取得できない)となります。

〈理由〉

遺産分割の効果は相続開始時に遡及する
→相続開始後遺産分割前に遺産を譲り受けた者(第三者)は権利を取得できない。

〈例外〉

遺産分割前に遺産を譲り受けた者(第三者)が登記(対抗要件)を得ている場合
→第三者が優先される(権利を取得する)

詳細は,遺産分割前の第三者と遺産分割

共有持分の譲渡と特定財産承継遺言の優劣

共有持分の譲渡と特定財産承継遺言の優劣関係は,平成30年改正民法の施行前後で扱いが変わりました。

詳細は,「相続させる」遺言(特定財産承継遺言)

遺産の中の特定財産の処分の後の分割手続

遺産の中の特定財産(共有持分)の譲渡や放棄がなされた場合,その後の分割手続(共有を解消する手続)の方法はどうなるのしょうか。

詳細は,遺産中の特定財産の処分(譲渡)後の遺産分割


その他、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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