一軒家(持ち家)の立ち退き料(立退料)の相場

author:弁護士法人AURA(アウラ)
都市計画道路の拡張や土地区画整理などの公共事業や借地上の建物に住んでいる場合に、突然,マイホームの立ち退きを要求されたとき,どうすればいいでしょうか。

立ち退き料とは

立ち退き料は所有者への補償料+慰謝料です。
ここでは、国や市の事業計画や個人間の借地契約解除によって退去しなければならない場合について解説します。
一軒家(一戸建て)の持ち家の場合、築10年で購入当時、土地建物合わせて約4000万円であったという事例では立退料が5000万円支払われたという場合がありました。国は都市計画にかかる戸建て住居に支払う立退料は現在の土地建物の相場価格、転居費用、仮住まいを確保するために支出する費用、工作物の補償などが考慮されます。また、立退を求められた住民の精神的な補償が加算される場合もあります。そのため、購入価格よりも高額に立退料を支払ってもらえることも少なくありません。
 
賃貸アパートの場合、賃料約5〜10万円のアパートの立退料の相場は約200万円前後と言われています。賃貸アパートの立退料においては賃貸人の事情と賃借人の事情を衡量して決定されることが多いです。例えば、賃貸人が立退を求める事情がやむを得ないと判断されるような事情であれば立退料は低くなる方向に傾きますし、逆に賃借人に立退を強いるのが酷であるという事情がある場合には立退料は高くなる方向に傾きます。このように、個別的な事情に応じて判断されることが多いです。

上記のように立退料は目的物、その他の個別的な事情によって異なります。立退を求められた場合に立退料が納得できない場合には賃貸人等と直接交渉すること必要があります。しかし、このような交渉によっても立退料の合意がされない場合には弁護士などの専門家に助言を仰ぐことも一つの手段ですし、場合によっては法的手段を取らなければなりません。

土地区画整理事業による立ち退き

内縁でも遺産相続ができるケース
土地区画整理事業とは、国民が暮らす場所をより効率的に利用するために土地の形を再編する事業です。
この事業は知事や国土交通省の許可をもって施工されるため、強制力が非常に強い事業です。
また、きれいなまち作りを目指すために道路や公園を作る土地が必要になります。
そのため、所有者の土地が少しずつ削られ再配置(減歩)されます。
この土地に再度住むこともできますが、別の場所で新たに住むとなる場合は立ち退き料をもらうことができます。
この場合の計算方法は、土地と建物(工作物も含む)に分けて計算をします。
土地に関しては、公示価格や基準地価など国や自治体が公表している数字を基に算出します。
建物に関しては、建物を移転した場合、建物を一部除去した場合などの費用を、建物の築年数や構造、用途などを基準に、公共事業を行う自治体が計算します。
  • 土地売買価格(完全移住の場合)
  • 建物再建築価格
  • 解体費
  • 引っ越し代
  • 仮住まい費用
  • 上乗せ分(迷惑料ないし慰謝料)
土地区画整理事業は土地の再編成となるため、実際は立ち退きを行わなくとも使用することができます。
その場合は権利変換(等価で新しいビルの床や土地の共有持ち分に置き換える方式)という方法を使用し、立ち退きではなく元の土地に戻ってくるということができます。
完全移住の場合は土地売買価格も対象となりますが、固定資産税の課税標準額ではなく実際に土地を売買する場合の価格で算出します。

都市計画道路による立ち退き

昔は混んでいた道路が2車線やパイパスになり渋滞緩和された、という工事をよく見かけます。
このように効果的な利用を目的とした道路を都市計画道路といいます。
家を買った(もしくは土地を買った)タイミングで都市計画道路にかかる不動産かどうかは決まっています。
所有者はそれを知った上で購入したことになるわけですが、この場合であっても立ち退き料はもらえます。
何故なら、都市計画道路はいつ建築がスタートするか分からず、40年以上経っても予算取りすら行われていない場合がほとんどたからです。
ずっと計画が頓挫していたのにいきなり工事が始まって持ち家が削られてしまったものの、購入時に知っていたから立ち退き料は支払われない。
都市計画道路に関連する立ち退きではこのようなことにならないよう、他の立ち退きケースと同様にしっかりと立ち退き料支払いの話し合いが行われます。
  • 土地売買価格
  • 建物再建築価格
  • 解体費
  • 引っ越し代
  • 仮住まい費用
  • 上乗せ分(迷惑料ないし慰謝料)
都市計画道路の場合は土地区画整理事業とは違い、計画道路にどのくらい干渉するのかで項目が変わります。
そのため、上記項目が全て該当しない場合もありますので注意が必要です。

借地契約の解約による立ち退き

土地を借りてその上に建物を建築する場合、土地所有者(地主)と借地契約を締結することになります。
この契約は借主に対し有利な内容となっており、簡単に地主側の都合で契約解除とはできないよう保護されています。
しかし、どのような状況であっても地主は借地契約を解除することができないわけではありません。
ポイントは、正当事由があるかないかです。
正当事由として認められるかどうかは、地主の経済状況が大きく関係しています。
  • 家族が使う事になった
  • 他に不動産があるけれどこの土地を売ることした
  • お金に困っている
  • 知人に貸したい
このような理由だけでは正当事由があるとは認められません。
正当事由があると認められるためには、以下の理由を考慮して総合的に判断されます。
  • 地主がどうしても土地を売る理由、もしくは自分が使う理由がある
  • 借地期間や借地契約以前の状況からの変化が考慮に値する
  • 借主に立ち退き料もしくは代わりの土地を用意し、建物解体費や移住地の建築費用を用意できる
一般的には退去するだけの賃貸とは違い、建てるために多くの費用と工数を費やした持ち家を解体し、移住するには精神的にも大きな負担がかかります。
そのため、国家事業ではなくとも立ち退き料(慰謝料・迷惑料を含む)をもらうことができます。
  • 建物再建築価格(移住先)
  • 解体費
  • 引っ越し代
  • 仮住まい費用
  • 上乗せ分(迷惑料ないし慰謝料)
国や市による再編事業とは違い、借地契約解除の場合は支払う側も個人であるため、提示する見積は、相場と異なることもあります。

借地の場合は借地上に建物が建てられて利用されている場合と借地上の建物が利用されていない場合によって立退料の相場が場合分けされます。借地上の建物が利用されている場合には立退料の算定において借地権の相場価格を算定し、これに基づいて立退料を決定する場合が多いです。これに対して借地上の建物が利用されていない場合には借地権の相場価格から減額されることが多く、立退料は低額になる場合も少なくありません。

引越し費用や仮住まい費用については感覚的に相場が分かるため、適正価格かどうかは分かる人も多いですが、解体費や土地価格については普段から馴染みがないため、相場より低い金額で提示されていても分からない場合が多いでしょう。

そのため、立ち退き料や立ち退き期間についてはお互いの主張がまとまらないケースも多いです。
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